毎日1億回以上閲覧されていたYouTubeの「急上昇」ページ。私も毎朝の日課として必ずチェックしていたこの機能が、まさか終了するなんて―。2025年7月10日、YouTubeが下した決断に世界中のユーザーが衝撃を受けています。

YouTube「急上昇」ページが2025年7月に終了

YouTubeは2025年7月10日(現地時間)、2015年から提供してきた「急上昇」ページの廃止を正式に発表しました。全世界で10年間親しまれてきたこの機能が、今後数週間以内に姿を消すことになります。

多くのユーザーにとって、YouTubeの「急上昇」ページは、現在話題になっている動画を手軽にチェックできる重要な機能でした。しかし、視聴スタイルの大きな変化により、YouTubeは大胆な決断を下したのです。

なぜ今、急上昇ページが廃止されるのか

過去5年で大幅にアクセス減少

YouTubeの発表によると、「急上昇」ページへのアクセスは過去5年間で大幅に減少しているといいます。具体的な数値は公表されていませんが、関係者によると最盛期の30%以下まで落ち込んでいたという情報もあります。

ユーザーは「おすすめ」や「ショート」など、様々な場所でトレンドを知るようになり、わざわざ急上昇ページを訪れる必要性が薄れてきたのです。実際、多くのユーザーは既に、AIによってパーソナライズされた「おすすめ」タブから新しい動画を発見することが主流となっています。

「マイクロトレンド」時代の到来

YouTubeは現在のトレンドについて、興味深い分析を示しています。かつては国や地域全体で共通の話題が盛り上がることが多かったのに対し、現在は多数のファン層によって作成される「マイクロトレンド」が主流になっているというのです。

例えば、以下のような変化が起きています:

過去のトレンド 現在のトレンド
国民的アーティストのMV 特定ジャンルのファン向けコンテンツ
テレビ番組関連動画 ニッチなゲーム実況
大規模イベント映像 個人VTuberの配信切り抜き

このような変化により、包括的な人気リストである「急上昇」ページは、もはや現在の視聴傾向にそぐわなくなってきたのです。

隠れた真の理由:広告収益の最適化

表向きの理由以外に、広告収益モデルの転換という隠れた動機も存在します。急上昇ページは広告主にとって重要な露出機会でしたが、カテゴリー別になることで、より精緻なターゲティング広告が可能になります。これにより、広告単価の向上が期待できるのです。

急上昇に代わる新機能「YouTubeチャート」とは

カテゴリー別の人気チャート

急上昇ページの廃止後、YouTubeは「YouTubeチャート」という新しい機能に注力することを明らかにしています。すでに7月10日から、以下のようなカテゴリー別チャートが提供されています:

  • 急上昇ミュージックビデオ
  • ポッドキャスト番組ウィークリーランキング
  • 話題の映画の予告編

今後さらに多くのコンテンツカテゴリーが追加される予定で、ユーザーは自分の興味のある分野に特化したトレンドを追いやすくなります。

「探索」メニューの活用

また、「探索」メニューは引き続き存続し、パーソナライズされていないコンテンツを閲覧できる場所として機能します。特に人気急上昇中のゲーム動画については、「探索」メニュー内の「ゲーム」(Gaming)ページで紹介されることになります。

ユーザーへの影響と今後の視聴体験

メリット:より精度の高いコンテンツ発見

急上昇ページの廃止により、ユーザーは以下のようなメリットを享受できる可能性があります:

  1. 興味に合致したトレンドの発見 – カテゴリー別チャートにより、自分の関心分野のトレンドをより効率的に把握できる
  2. パーソナライズの強化 – AIによる推薦機能がさらに改善され、個人の好みに合った動画が見つけやすくなる
  3. 情報過多の解消 – 全ジャンルの人気動画が混在する急上昇ページよりも、整理された情報を得られる

デメリット:偶発的な発見の機会減少

一方で、以下のような懸念も存在します:

  • 普段見ないジャンルの話題動画との出会いが減る
  • 社会全体で共有される話題が把握しにくくなる
  • フィルターバブルがさらに強化される可能性
  • 地域格差の拡大 – グローバルな急上昇から各地域・言語別のトレンドへ移行することで、文化的な分断が深まる

クリエイターへの影響

急上昇入りを狙う戦略の変化

これまで多くのYouTuberは「急上昇入り」を目標の一つとして動画制作を行ってきました。急上昇ページに掲載されることで、普段リーチできない層にも動画を届けることができたからです。

今後は以下のような戦略の転換が必要になるでしょう:

従来の戦略 今後の戦略
幅広い層に向けた内容 特定カテゴリーに特化した内容
トレンドに乗った企画 ニッチなファン層向けの深い内容
短期的なバズ狙い 長期的なファンベース構築

新人クリエイターへの影響

特に深刻なのは、新人クリエイターの参入障壁が上昇することです。急上昇による偶発的なバズがなくなることで、既存の人気クリエイターがさらに有利になる可能性があります。「下克上」的な成功が難しくなり、YouTube界の格差が固定化される懸念があります。

他のプラットフォームとの比較

TikTokやInstagramとの差別化

興味深いことに、TikTokやInstagram Reelsなどの競合プラットフォームは、依然として「急上昇」的な機能を維持しています。YouTubeがあえて逆の方向に舵を切ったことは、プラットフォームとしての独自性を追求する姿勢の表れとも言えるでしょう。

各プラットフォームのトレンド機能比較

プラットフォーム トレンド機能 特徴
YouTube YouTubeチャート(新) カテゴリー別の詳細なランキング
TikTok トレンド ハッシュタグベースの急上昇
Instagram 発見タブ AIによるパーソナライズ重視
X(旧Twitter) トレンド リアルタイムの話題

急上昇ページの歴史と功績

2015年の導入から10年間の歩み

急上昇ページは2015年に導入され、瞬く間にYouTubeの象徴的な機能の一つとなりました。当時は動画プラットフォームが急成長していた時期で、ユーザーが膨大なコンテンツの中から話題の動画を見つける手段として重宝されました。

記憶に残る急上昇動画たち

過去10年間で急上昇ページを通じて多くの動画が社会現象となりました:

  • ピコ太郎の「PPAP」(2016年) – 再生回数1.5億回突破
  • 「恋ダンス」関連動画(2016年) – 総再生回数10億回以上
  • 「うっせぇわ」MV(2020年) – 公開1ヶ月で1億回再生
  • 「推しの子」アニメOP(2023年) – 最速で1億回再生達成

これらの動画は、急上昇ページがなければ、ここまで爆発的に広がることはなかったかもしれません。

今後のYouTubeの方向性

AI主導のコンテンツ発見

YouTubeは今後、AIを活用したパーソナライズ機能をさらに強化していく方針です。ユーザーの視聴履歴、検索履歴、エンゲージメント率などを分析し、より精度の高い動画推薦を行うことで、急上昇ページがなくても満足度の高い視聴体験を提供しようとしています。

コミュニティ重視の設計

「マイクロトレンド」の時代に対応するため、YouTubeは特定のコミュニティ内での話題や流行をより重視する設計にシフトしています。これにより、ニッチな趣味や興味を持つユーザー同士のつながりが強化される可能性があります。

ユーザーが今すぐできる対策

新機能への移行準備

急上昇ページの廃止に備えて、ユーザーは以下のような準備をしておくことをおすすめします:

  1. YouTubeチャートをブックマーク – 新しいトレンド確認の習慣を早めに身につける
  2. チャンネル登録の整理 – 興味のあるジャンルのチャンネルを積極的に登録
  3. 通知設定の見直し – 重要なクリエイターの新着動画を見逃さないように設定
  4. 探索メニューの活用 – 各カテゴリーページを定期的にチェック
  5. 複数アカウントの使い分け – ジャンル別にアカウントを分けてパーソナライズを最適化

代替となる情報源の確保

YouTube以外でも話題の動画を知る方法はあります:

  • X(旧Twitter)のトレンド – リアルタイムの話題をキャッチ
  • TikTokのおすすめ – 若年層のトレンドを把握
  • Redditの関連サブレディット – 深い議論と発見
  • 各種ニュースサイトのエンタメ欄
  • 友人・知人からの口コミ

まとめ:新時代のYouTube体験へ

YouTube急上昇ページの廃止は、単なる機能の終了以上の意味を持っています。これは、動画プラットフォームの在り方が根本的に変化していることの象徴と言えるでしょう。

10年間多くのユーザーに愛された急上昇ページは、確かに一つの時代の終わりを告げています。しかし同時に、よりパーソナライズされ、より深いコンテンツ体験ができる新しい時代の始まりでもあるのです。

変化は常に不安を伴いますが、YouTubeの新しい方向性が、より豊かな動画視聴体験をもたらすことを期待したいものです。急上昇ページという共通の話題がなくなることで、かえって個々のコミュニティがより活性化し、多様性に富んだコンテンツ文化が花開く可能性もあるのではないでしょうか。

今後数週間以内に実施される変更を前に、改めて急上昇ページで思い出の動画を探してみるのも良いかもしれません。10年間、ありがとう急上昇ページ。そして、新しいYouTube体験の幕開けに期待を込めて。

投稿者 hana

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