2025年7月13日、日本列島は記録的な猛暑に見舞われています。全国200地点以上で35℃を超える猛暑日を記録し、東京でも今年初の35℃超えとなりました。
エアコンがフル稼働するこの時期、多くの人が心配するのが「電力不足」です。しかし、意外なことに今年は節電要請が一切出されていません。
一体なぜでしょうか?その裏側には、私たちが知らない3つの真実が隠されていました。
猛暑なのに節電要請なし!7年ぶりの快挙
経済産業省が2025年5月23日に発表した「2025年度夏季の電力需給対策」によると、今夏は全エリアで安定供給に必要な予備率3%を確保できる見通しです。
これは実に7年ぶりの快挙です。2022年には夏と冬の2回、全国規模の節電要請が出されました。当時は新型コロナウイルスの影響による生活スタイルの変化、火力発電所の老朽化、そしてウクライナ危機が重なり、電力供給が逼迫していました。
2025年夏の電力予備率(全国)
エリア | 7月予備率 | 8月予備率 | 判定 |
---|---|---|---|
北海道 | 8.2% | 7.9% | ◎安定 |
東北 | 6.5% | 5.8% | ○良好 |
東京 | 4.8% | 4.2% | ○良好 |
中部 | 5.3% | 4.9% | ○良好 |
関西 | 5.1% | 4.6% | ○良好 |
中国 | 6.8% | 6.2% | ○良好 |
四国 | 7.3% | 6.9% | ○良好 |
九州 | 5.6% | 5.0% | ○良好 |
沖縄 | 28.4% | 27.8% | ◎安定 |
特に注目すべきは沖縄の予備率の高さです。28%を超える余裕があり、他地域への融通も可能な状況です。
真実その1:太陽光発電が救世主に
節電要請が不要になった最大の要因は、太陽光発電の急速な普及です。
2025年現在、日本の太陽光発電の設備容量は約9,000万kWに達しています。これは原子力発電所90基分に相当する規模です。
太陽光発電の驚異的な成長
- 2015年:約3,000万kW
- 2020年:約6,700万kW
- 2025年:約9,000万kW(10年で3倍)
特に夏場の昼間、エアコン需要がピークを迎える時間帯は、太陽光発電も最大出力となります。この「需要と供給のマッチング」が、電力安定供給の鍵となっているのです。
実際、7月13日の東京電力管内では、午後1時のピーク時に太陽光発電が全体の供給量の約35%を占めました。これにより、火力発電所の負担が大幅に軽減されています。
真実その2:隠された構造的リスク
しかし、手放しで喜べない現実もあります。経済産業省の報告書には、こんな警告が記されています。
「供給サイドは、確保している供給力の中に老朽化した火力発電所が含まれているなど、構造的な課題を抱えており、設備トラブル等のリスクを踏まえると、予断を許さない状況」
日本の電力供給が抱える5つのリスク
1. 老朽火力発電所への依存
現在稼働中の火力発電所の約40%が運転開始から40年以上経過しています。これらの発電所は、いつ大規模な故障を起こしてもおかしくない状況です。
2. 太平洋沿岸への集中
主要な火力発電所の多くが東京湾や太平洋沿岸に集中しており、南海トラフ地震などの大規模災害に対して極めて脆弱です。
3. 燃料調達の地政学的リスク
LNG(液化天然ガス)の約90%を輸入に依存する日本は、中東情勢やロシア・ウクライナ情勢の影響を直接受けます。
4. 原子力発電所の再稼働遅延
2025年7月現在、再稼働している原子力発電所はわずか12基。震災前の54基から大幅に減少したままです。
5. 送電網の老朽化
高度経済成長期に整備された送電網も老朽化が進み、年間約1,000件の送電トラブルが発生しています。
真実その3:私たちにできる3つの対策
節電要請がなくても、電力の安定供給は綱渡り状態です。私たち一人ひとりができる対策を実践することが重要です。
1. スマートな電力使用
ピークシフトの実践
電力需要のピークは午後1時~4時。この時間帯の使用を避けるだけで、電力供給の安定に貢献できます。
- 洗濯機・乾燥機:早朝または夜間に使用
- 食洗機:タイマー機能で深夜運転
- 電気自動車の充電:深夜電力を活用
エアコンの効率的な使用
エアコンは家庭の夏場の電力消費の約58%を占めます。以下の工夫で30%以上の節電が可能です。
- 設定温度を28℃に(1℃上げるだけで約10%節電)
- 扇風機との併用で体感温度を2℃下げる
- カーテンやすだれで直射日光を遮る
- フィルター掃除で効率20%アップ
2. 家庭用蓄電池の導入
2025年現在、家庭用蓄電池の価格は5年前の半額以下に下がっています。太陽光発電と組み合わせることで、以下のメリットがあります。
- 昼間の余剰電力を夜間に使用
- 停電時のバックアップ電源
- 電力需給逼迫時の自立運転
- 売電収入の最大化
3. デマンドレスポンスへの参加
電力会社が提供する「デマンドレスポンス」プログラムに参加することで、電力需給の安定化に貢献しながら、電気料金の割引も受けられます。
デマンドレスポンスの仕組み
- 電力需給が逼迫しそうな時に通知が届く
- 指定時間帯の電力使用を控える
- 協力度に応じて電気料金を割引
- 平均で年間5,000~10,000円の節約に
猛暑を乗り切るための実践的アドバイス
熱中症予防と節電の両立
節電は大切ですが、命を守ることが最優先です。特に高齢者や子どもがいる家庭では、以下の点に注意してください。
エアコンを使わずに涼しく過ごす10の方法
- 打ち水:朝夕の涼しい時間帯に実施(2~3℃下がる)
- グリーンカーテン:ゴーヤや朝顔で自然の日よけ
- 風の通り道:対角線上の窓を開けて風を通す
- 冷感グッズ:冷感シーツや冷却ジェルマットの活用
- 水分補給:1日2リットル以上、塩分も忘れずに
- 遮熱フィルム:窓に貼るだけで室温2~3℃低下
- LED照明:白熱電球の1/8の発熱量
- 打ち水タイマー:自動散水で手間なく涼しく
- 氷枕・保冷剤:首筋や脇の下を冷やす
- 昼寝タイム:最も暑い時間帯は活動を控える
電気料金を抑える裏技
時間帯別料金プランの活用
多くの電力会社が提供する「時間帯別料金プラン」を活用すれば、電気料金を最大30%削減できます。
時間帯 | 通常プラン | 時間帯別プラン | 節約率 |
---|---|---|---|
深夜(23時~7時) | 30円/kWh | 15円/kWh | 50%OFF |
朝夕(7時~10時、17時~23時) | 30円/kWh | 25円/kWh | 17%OFF |
昼間(10時~17時) | 30円/kWh | 40円/kWh | 33%UP |
昼間の使用を控えて深夜にシフトするだけで、大幅な節約が可能です。
2025年夏以降の電力供給見通し
期待される3つの改善要因
1. 洋上風力発電の本格稼働
2026年から秋田県や千葉県沖で大規模な洋上風力発電が稼働予定。合計500万kWの供給力が追加されます。
2. 次世代送電網の整備
AIを活用した「スマートグリッド」により、電力の需給バランスを自動調整。送電ロスを現在の5%から2%に削減します。
3. 水素発電の実用化
2027年から商用水素発電所が稼働開始。CO2を排出しないクリーンな電力供給が可能になります。
まとめ:私たちが今すぐできること
2025年夏、節電要請なしで猛暑を乗り切れているのは、太陽光発電の普及という明るい要因がある一方で、老朽化した電力インフラに依存する危うい現実もあります。
電力の安定供給は、決して当たり前ではありません。私たち一人ひとりが「電力の使い方」を見直し、持続可能な社会を作っていく必要があります。
今すぐ実践できる3つのアクション
- ピークシフト:午後1~4時の電力使用を控える
- 省エネ家電への買い替え:10年前の製品と比べて消費電力50%削減
- 電力会社のアプリ導入:リアルタイムで使用量を確認、無駄を削減
猛暑はまだまだ続きます。賢い電力使用で、快適で持続可能な夏を過ごしましょう。
あなたの小さな行動が、日本の電力供給を支えています。