ときメモ声優・関根明子さん死去、ツンデレの元祖が残した功績
声優・ナレーターとして活躍した関根明子(せきね・あきこ)さんが、2025年8月2日にがんのため死去したことが、翌3日に所属事務所RMEより発表された。代表作は恋愛シミュレーションゲーム「ときめきメモリアル」シリーズの如月未緒(きさらぎ・みお)役。文学少女キャラクターの歴史を塗り替えた伝説的な声優の訃報に、ファンから悲しみの声が広がっている。
約40年にわたる輝かしい声優人生
関根明子さんは東京都出身。10月5日生まれで、青二塾東京校第6期生として声優の道を歩み始めた。1986年頃にデビューし、青二プロダクションに所属。その後、2020年4月1日にRMEへ移籍し、最期まで精力的に活動を続けていた。
所属事務所RMEは公式サイトで「2024年よりがんを患い闘病中でした。声優として仕事に最大限の努力をして参りましたが帰らぬ人となってしまいました」と発表。関根さんは最後まで声優としての誇りを持ち、病と闘いながらも仕事への情熱を失わなかったという。
青二塾での厳しい修行時代
関根さんが卒業した青二塾は、声優養成所の中でも特に厳しいことで知られる名門校だ。第6期生として入塾した関根さんは、演技の基礎から発声法、アフレコ技術まで徹底的に叩き込まれた。同期には後に活躍する声優たちも多く、切磋琢磨しながら技術を磨いていった。
青二プロダクション時代は、先輩声優たちから多くのことを学んだ。特にナレーション技術については、NHKの番組などで経験を積み、「声の職人」と呼ばれるほどの実力を身につけていった。
代表作「ときめきメモリアル」如月未緒役の衝撃
関根明子さんの名を不動のものにしたのは、1994年に発売された恋愛シミュレーションゲーム「ときめきメモリアル」の如月未緒役だった。眼鏡をかけた文学少女という設定のキャラクターで、当時の恋愛ゲームにおける新たな魅力を提示した。
如月未緒は2月3日生まれ、血液型A型、身長156cmという設定。体が弱く貧血気味で、詩集や恋愛小説を読むのが趣味という、典型的な「文学少女」キャラクターだった。しかし関根さんの演技により、単なる「おとなしい文学少女」ではない、芯の強さを持つキャラクターとして生命を吹き込まれた。
「ツンデレ」の原型となったキャラクター性
如月未緒は、後に「ツンデレ」と呼ばれるようになるキャラクター性の原型を示していた。真面目で礼儀正しく話すが、嫌なことははっきりと意見する。最初は主人公に対して距離を置いているが、親密度が上がるにつれて素直な感情を見せるようになる。
この「文学系キャラクター=引っ込み思案」という固定観念を覆す演技は、当時の男子中高生に強烈な印象を与えた。関根さんの声による如月未緒は、単なるゲームキャラクターを超えて、多くのプレイヤーの青春の1ページに刻まれる存在となった。
アニメ・ゲームでの幅広い活躍
関根さんの活躍は「ときめきメモリアル」だけにとどまらなかった。アニメでは「蒼き伝説シュート!」の平松静子役、「魔法使いサリー」の春の女神・オンディーヌ役、「爆丸バトルブローラーズ」のコード・イヴ役など、幅広いキャラクターを演じ分けた。
多彩なキャラクターを演じ分ける技術
関根さんの声優としての特徴は、その演技の幅広さにあった。清楚な文学少女から活発なスポーツ少女、神秘的な女神キャラクターまで、求められる役柄に応じて声色や演技を自在に変化させることができた。
特に「魔法使いサリー」での春の女神役では、その透明感のある声質を活かし、神秘的で優しい女神を見事に演じきった。また「爆丸バトルブローラーズ」のコード・イヴ役では、クールで知的なキャラクターを演じ、若い世代のファンも獲得していた。
ナレーターとしての確かな実力
声優業と並行して、関根さんはナレーターとしても高い評価を得ていた。NHKの「自然のたより」「教育トゥデイ」「趣味悠々」「中学理科」など、教育・教養番組を中心に活躍。その落ち着いた声質と的確な読みは、視聴者から「聞きやすい」「信頼できる」と評判だった。
CMナレーションでも存在感
企業CMのナレーションも数多く担当し、商品の魅力を的確に伝える技術は業界内でも定評があった。特に化粧品や食品関連のCMでは、その柔らかく親しみやすい声が商品イメージと見事にマッチし、長年にわたって起用され続けた。
ナレーション業界では「関根さんに頼めば間違いない」と言われるほどの信頼を得ており、ディレクターからの指名も多かった。収録現場では常にプロフェッショナルな姿勢を崩さず、若手ナレーターの手本となる存在だったという。
夫は声優界の重鎮・柴田秀勝さん
関根さんの夫は、同じく声優として活躍する柴田秀勝(しばた・ひでかつ)さん。1937年3月25日生まれで、現在88歳。RMEの代表取締役会長を務めており、声優界の重鎮として知られる存在だ。
柴田さんは1963年に「タイガーマスク」のミスターX役でデビューし、1969年には青二プロダクションの創設メンバーの一人となった。新宿ゴールデン街で会員制バー「突風(とっぷう)」も経営するなど、多方面で活躍している。
30年以上連れ添った夫婦の絆
柴田さんは妻の訃報に際し「30年以上の長きにわたり一緒にいてくれました」とコメント。二人の間には子供もおり、2024年には「7人目のひ孫が会いに来てくれた」と関根さんがSNSに投稿していたことから、大家族に恵まれていたことがうかがえる。
声優夫婦として、お互いの仕事を理解し支え合ってきた二人。関根さんが2020年に青二プロダクションからRMEに移籍したのも、夫が会長を務める事務所で最後まで一緒に仕事をしたいという思いがあったのかもしれない。
2024年からのがん闘病
関根さんは2024年からがんとの闘病を始めていた。一部報道では食道がんだったとされており、前年には手術も受けていたという。しかし、病気を公表することなく、最後まで声優としての仕事を続けていた。
仕事への情熱を最後まで
闘病中も「声優として仕事に最大限の努力をして参りました」と事務所が発表したように、関根さんは病と闘いながらも現場に立ち続けた。収録現場では体調の悪さを見せることなく、いつも通りプロフェッショナルな仕事ぶりを見せていたという。
共演者やスタッフからは「最後まで声優としての誇りを持っていた」「病気のことを感じさせない、いつもの関根さんだった」という証言が聞かれる。声優という仕事への愛と責任感が、最後まで関根さんを支えていたのだろう。
ファンから広がる追悼の声
訃報が伝えられると、SNS上には多くのファンから追悼のメッセージが寄せられた。特に「ときめきメモリアル」世代のファンからは、「青春の思い出をありがとう」「如月未緒は永遠に心の中にいます」といった声が相次いだ。
世代を超えて愛された声優
関根さんの声は、1990年代の「ときメモ」世代だけでなく、2000年代以降のアニメファンにも愛されていた。「爆丸バトルブローラーズ」などの作品を通じて関根さんを知った若いファンからも、「素敵な声をありがとうございました」という追悼の言葉が寄せられている。
また、同業者からも追悼の声が上がっている。特に青二プロダクション時代の同僚や、共演した声優たちからは、その人柄と演技力を称える言葉が相次いでいる。
声優業界に残した大きな功績
関根明子さんが声優業界に残した功績は計り知れない。特に「ときめきメモリアル」での如月未緒役は、恋愛ゲームにおけるキャラクター造形に新たな可能性を示した。それまでの固定観念を打ち破る演技は、後の声優たちにも大きな影響を与えている。
後進育成への貢献
関根さんは後進の育成にも積極的だった。収録現場では若手声優たちに優しくアドバイスを送り、時には厳しく指導することもあった。その指導を受けた声優たちは、今も関根さんから学んだことを大切にしているという。
特にナレーション技術については、多くの後輩が関根さんを手本にしていた。「関根さんのように読めるようになりたい」と目標にする若手ナレーターも多く、その技術は次世代に受け継がれていくことだろう。
これからも生き続ける関根明子さんの声
関根明子さんは逝去したが、その声は作品の中で永遠に生き続ける。「ときめきメモリアル」の如月未緒、「蒼き伝説シュート!」の平松静子、「魔法使いサリー」の春の女神…。これらのキャラクターは、これからも多くの人々の心に残り続けるだろう。
また、NHKの教育番組やCMナレーションなど、関根さんが残した膨大な仕事は、日本の声の文化の一部となっている。その確かな技術と温かい人柄は、声優業界の歴史に確実に刻まれた。
デジタル時代に受け継がれる遺産
現在、多くのゲームやアニメがデジタルリマスター化され、新しい世代にも楽しまれている。「ときめきメモリアル」シリーズも様々なプラットフォームで遊べるようになり、関根さんの声は今も新たなファンを獲得し続けている。
声優という仕事は、演じた瞬間だけでなく、作品が存在する限り永遠に残る。関根明子さんが残した数々の演技は、これからも多くの人々に感動と喜びを与え続けることだろう。
まとめ:一つの時代を築いた声優の旅立ち
関根明子さんの死去は、日本の声優界にとって大きな損失だ。約40年にわたる声優人生で、アニメ、ゲーム、ナレーションと幅広い分野で活躍し、多くの人々に愛される声を届けてきた。
特に「ときめきメモリアル」の如月未緒役は、恋愛ゲームの歴史に残る名演となった。文学少女キャラクターに新たな魅力を与え、後の「ツンデレ」キャラクターの原型を作り上げた功績は大きい。
最後まで声優としての誇りを持ち、病と闘いながらも仕事を続けた関根さん。その姿勢は、多くの後輩声優たちの模範となっている。夫の柴田秀勝さんをはじめ、家族に見守られながらの旅立ちだった。
関根明子さんが残した声は、これからも作品の中で生き続ける。そして、その演技に込められた情熱と愛は、次世代の声優たちに受け継がれていくことだろう。心よりご冥福をお祈りいたします。