小柄な身体に宿る、大きな夢と覚悟

「海猿になりたい」──小学生の時に見た映画に心を奪われた一人の少女が、ついにその夢を叶えた。2024年8月1日、海上保安庁に史上初となる女性潜水士が誕生した。その主人公は、濵地多実(はまちたみ)さん、25歳。身長155cmという小柄な体格ながら、わずか1%という超難関の潜水士選抜試験を突破し、長崎海上保安部の巡視船「でじま」に配属された。

海上保安庁で働く約1万4800人の職員のうち、潜水士として活躍するのはわずか121人(2024年4月時点)。全体の1%にも満たない、まさに「選ばれし海猿」と呼ぶにふさわしい存在だ。そして2025年1月、濵地さんは「訓練はじめ」で高さ8メートルの船首から海に飛び込む救助訓練に挑み、その勇姿が全国に報じられた。

5キロの重りを持って15分間の立ち泳ぎ──過酷な訓練を乗り越えて

潜水士になるための訓練は、想像を絶する過酷さだ。濵地さんが受けた研修では、5キロの重りを両手に持ったまま15分間立ち泳ぎを続けるという課題があった。「正直、きついと思うことはたくさんありました」と振り返る濵地さんだが、同期の仲間たちの支えがあったからこそ、最後までやり遂げることができたという。

2025年1月24日に行われた「訓練はじめ」では、さらにハードな訓練が公開された。10キロの重りを持ったまま5分間の立ち泳ぎ、重さ60キロの人形を使った救助訓練、そして8メートルの高さから海への飛び込み。これらの訓練を、濵地さんは鍛え抜かれた腕の筋肉を駆使して見事にこなした。その姿は、多くの人々に感動と勇気を与えている。

「身長や性別は関係ない」──SNSで広がる共感と称賛の声

濵地さんの活躍は、SNSで大きな話題となっている。「身長155cmでもこんなにすごいことができるんだ」「女性だからって諦める必要はないんだと勇気をもらった」「小柄でも努力次第で夢は叶う」──こうした共感と称賛の声が、X(旧Twitter)やInstagramで次々と投稿されている。

特に注目されているのは、濵地さんの鍛え抜かれた腕の筋肉だ。重い装備を身につけ、荒波の中で救助活動を行うには、相当な筋力と体力が必要になる。155cmという身長をハンディキャップではなく、むしろ自分の個性として受け入れ、必要な筋力を徹底的に鍛え上げた濵地さんの姿勢は、多くの人々の心に響いている。

映画「海猿」が人生を変えた──小学生の頃からの夢を実現

濵地さんが潜水士を目指すきっかけとなったのは、小学生の時に見た映画「海猿」だった。伊藤英明さん主演のこの映画は、海上保安官の潜水士たちの活躍を描いた作品で、2004年に公開されて大ヒットした。危険な海難事故の現場で、命をかけて人々を救う潜水士たちの姿に、幼い濵地さんは強く心を揺さぶられた。

「私も海猿になりたい」──その夢を胸に、濵地さんは成長し、海上保安庁への入庁を果たした。そして2024年、ついに念願の潜水士としての辞令を受け取ることができた。「失敗を恐れずに挑戦していきたい」と語る濵地さんの言葉からは、新たなステージへの強い決意が感じられる。

女性活躍の新しいロールモデルとして

濵地さんの誕生は、日本の女性活躍推進にとっても大きな意味を持つ。これまで男性中心だった潜水士の世界に、女性が初めて足を踏み入れたことで、「女性にはできない仕事」という固定観念が打ち破られた。海上保安庁は今後、より多様な人材が活躍できる組織づくりを進めていく方針だ。

実際、濵地さんの誕生をきっかけに、「私も潜水士を目指したい」という女性からの問い合わせが増えているという。体力や筋力が求められる仕事だが、適切なトレーニングと強い意志があれば、性別や身長に関係なくチャレンジできることを、濵地さんは自身の経験で証明してみせた。

海難救助の最前線で活躍する「海猿」たちの使命

潜水士の仕事は、決して華やかなものではない。海難事故が発生すれば、昼夜を問わず出動し、時には命の危険にさらされながら救助活動を行う。水温が低い冬の海、視界がほとんどない濁った水中、強い潮流──そうした過酷な環境下で、冷静に判断し、確実に救助を成功させなければならない。

2025年1月の訓練では、濵地さんが実際の救助を想定した訓練に参加する様子が公開された。60キロの重さの人形を抱えて泳ぐ訓練では、小柄な身体で大きな人形を支え、確実に安全な場所まで運ぶ技術を披露。訓練を見守った海上保安部の幹部からも「技術は確実に身についている。実戦でも十分に活躍できる」と高い評価を受けている。

全国の海で活躍する潜水士たち──その厳しい現実

海上保安庁の潜水士は、全国の海上保安部に配置されており、それぞれの地域で海難救助に備えている。日本は四方を海に囲まれた島国であり、年間を通じて多くの海難事故が発生する。潜水士たちは、こうした事故に迅速に対応し、一人でも多くの命を救うために日々訓練を重ねている。

潜水士になるには、まず海上保安官として一定の経験を積んだ後、厳しい選抜試験に合格しなければならない。体力テスト、泳力テスト、潜水技術の習得、そして精神力を試される様々な課題──これらをクリアできるのは、応募者のわずか数パーセントだけだ。濵地さんも、何度も諦めそうになりながら、最後まで食らいついて合格を勝ち取った。

新たな挑戦を続ける濵地さんの今後

潜水士としてのキャリアをスタートさせた濵地さんだが、その道はまだ始まったばかりだ。「一人前の潜水士になるには、実際の現場での経験が不可欠」と語る濵地さんは、先輩潜水士たちから多くのことを学びながら、日々成長を続けている。

「将来的には、後輩の女性潜水士たちの良いお手本になりたい」と目標を語る濵地さん。日本初の女性潜水士として、これから多くの後輩たちが続くことを期待している。そして、海難事故の現場で一人でも多くの命を救うことが、自分の使命だと考えている。

多様性が広がる海上保安庁の未来

濵地さんの誕生は、海上保安庁における女性活躍の象徴となっている。海上保安庁では近年、女性職員の採用を積極的に進めており、様々な部署で女性が活躍している。巡視船の船長、航空機のパイロット、そして今回の潜水士──従来は男性がほとんどだった職種にも、女性が進出している。

こうした動きは、組織全体の多様性を高め、より柔軟な対応力を生み出すことにつながる。海難救助の現場では、女性ならではの視点や配慮が役立つ場面も少なくない。特に、女性や子どもが被害者となった事故では、女性職員の存在が被害者に安心感を与えることもある。

社会に広がる「挑戦する勇気」のメッセージ

濵地さんのストーリーは、海上保安庁の枠を超えて、社会全体に大きなメッセージを発信している。「身長が低いから」「女性だから」「体力に自信がないから」──そうした理由で夢を諦めかけている人々に、「それでも挑戦できる」という勇気を与えている。

実際、濵地さんの報道を見て、「自分も諦めていた夢にもう一度チャレンジしてみよう」という声がSNSに多数投稿されている。消防士、警察官、自衛隊員など、体力が求められる職業を目指す女性たちにとって、濵地さんの存在は大きな励みとなっている。

困難を乗り越えた訓練の日々──同期との絆

潜水士養成課程での訓練は、心身ともに極限まで追い込まれるものだった。早朝5時から始まる体力トレーニング、水中での長時間活動、そして緊急事態を想定したシミュレーション──一つ一つが過酷で、途中で諦めてしまう受講生も少なくない。

濵地さんが最も苦労したのは、やはり体格差だった。同期の男性隊員と比べて小柄な身体では、同じ装備を身につけても負担が大きくなる。しかし、濵地さんは決して弱音を吐かなかった。「みんなができることは、私にもできるはず」──そう自分に言い聞かせ、誰よりも長く筋力トレーニングに励んだ。

同期の仲間たちも、濵地さんの努力を見て刺激を受けたという。「彼女が頑張っている姿を見て、自分も頑張らなきゃと思った」と語る同期隊員も多い。訓練を通じて築かれた強い絆は、現場での連携にも活きている。

実戦を想定した訓練──冬の海での挑戦

2025年1月の「訓練はじめ」は、真冬の海で行われた。水温は10度前後まで下がり、体力の消耗も激しい。こうした厳しい環境下でこそ、潜水士としての真価が問われる。

濵地さんは、厚手のウェットスーツを着用し、重さ約30キロの潜水装備を背負って海に飛び込んだ。高さ8メートルの船首からの飛び込みは、恐怖心を克服する訓練でもある。「最初は怖かったけど、訓練を重ねるうちに自然と身体が動くようになった」と濵地さんは振り返る。

水中では、60キロの人形を使った救助訓練が行われた。実際の救助現場では、意識を失った要救助者を安全な場所まで運ばなければならない。濵地さんは、自分の体重よりも重い人形を抱え、確実に目標地点まで泳ぎ切った。その技術力の高さは、訓練を視察した幹部職員からも高く評価された。

家族のサポートと応援──夢を支えた人々

濵地さんが潜水士への道を歩むことができたのは、家族の理解とサポートがあったからだ。「娘が小さい頃から『海猿になりたい』と言っていたので、本気で夢を追いかける姿を応援したかった」と語る両親。海上保安庁への入庁から潜水士試験の合格まで、家族は常に濵地さんを支え続けてきた。

潜水士という仕事は、危険と隣り合わせだ。海難事故の現場では、自分の命も危険にさらされる可能性がある。そうしたリスクを理解した上で、それでも娘の夢を応援する家族の存在は、濵地さんにとって大きな支えとなっている。

後輩へのメッセージ──「あなたも挑戦できる」

濵地さんは、これから潜水士を目指す後輩たちに向けて、こんなメッセージを送っている。「身長や性別、体力──そういったことを理由に諦める必要は全くありません。大切なのは、強い気持ちと努力を続ける忍耐力です」

「私自身、身長155cmで体格的には決して恵まれていませんでした。でも、それを言い訳にせず、できることを一つずつ積み重ねてきました。筋力が足りなければ鍛える、技術が足りなければ練習する。当たり前のことを当たり前にやり続けることが、夢を叶える一番の近道だと思います」

こうした濵地さんの言葉は、潜水士を目指す人だけでなく、何か目標に向かって頑張るすべての人々に勇気を与えている。SNSでは、「濵地さんの言葉で泣きそうになった」「自分も諦めずに頑張ろうと思った」といったコメントが数多く寄せられている。

海難救助の重要性──一人でも多くの命を救うために

日本は四方を海に囲まれた島国であり、海は生活や経済に欠かせない存在だ。しかし同時に、海は時として人々の命を脅かす存在でもある。毎年、日本近海では数多くの海難事故が発生しており、海上保安庁の潜水士たちは、こうした事故に迅速に対応している。

船舶の衝突事故、転覆事故、海中での作業中の事故──様々な状況で、潜水士たちは要救助者の捜索と救助に当たる。視界が悪い水中、流れの速い海域、深い水深──どんな困難な状況でも、一人でも多くの命を救うために、潜水士たちは全力を尽くす。

濵地さんも、「一人の命でも多く救えるよう、これからも訓練と実践を積み重ねていきたい」と決意を語る。日本初の女性潜水士として、多くの人々から注目を集める濵地さんだが、彼女自身は常に現場第一の姿勢を貫いている。

まとめ:155cmの身体に込められた無限の可能性

身長155cm、25歳の濵地多実さんは、日本初の女性海上保安官潜水士として、新しい歴史を刻んだ。小学生の時に見た映画「海猿」に憧れ、わずか1%の狭き門を突破し、5キロの重りを持って15分間立ち泳ぎするという過酷な訓練を乗り越えた。

その姿は、「身長や性別は夢を叶える障害にはならない」という力強いメッセージを社会に発信している。SNSでは「勇気をもらった」「私も頑張ろう」という共感の声が広がり、多くの人々の心に希望の灯をともしている。

2025年1月の訓練で見せた勇敢な姿は、これからの海難救助の現場で、さらに多くの命を救うことにつながるだろう。濵地さんの挑戦は、日本の女性活躍推進にとって大きな一歩であり、後に続く女性潜水士たちへの道を切り開いた。155cmの身体に込められた無限の可能性が、今、日本の海を守っている。

投稿者 hana

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です