被爆80年「原爆の日」過去最多120カ国参列の平和への祈り
2025年8月6日、広島は人類史上初の原子爆弾投下から80回目の「原爆の日」を迎えた。この歴史的な節目の日に、広島市の平和記念公園では「令和7年平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)」が厳粛に執り行われ、約5万5000人の参列者が平和への祈りを捧げた。
過去最多120カ国・地域の国際参加が示す世界の関心
今回の式典で特筆すべきは、過去最多となる120カ国・地域と欧州連合(EU)代表部の代表者が参列したことだ。初参列となったパレスチナや台湾をはじめ、世界各国から平和への意志を示す代表者が広島に集結した。
注目すべきは、ウクライナ侵攻を続けるロシアは欠席したものの、ベラルーシは参加を継続したこと、また中東情勢が緊迫する中でイスラエルとイランの両国が参列したことだ。これは広島が持つ特別な象徴的意義を物語っている。
松井市長の平和宣言「核兵器廃絶を市民社会の総意に」
松井一実広島市長は平和宣言で、被爆80年という節目の重要性を強調し、「核兵器廃絶への思いを市民社会の総意にしていかなければならない」と力強く訴えた。
市長の宣言は、単なる追悼にとどまらず、現在進行形の国際情勢への警鐘も含んでいた。ウクライナ侵攻における核の脅し、イランの核開発問題など、核軍縮に逆行する流れが強まる中での開催となったこの式典は、特別な緊迫感を帯びていた。
被爆者・市民の証言「戦争で苦しむのは市民」
式典には多くの被爆者とその遺族が参列した。車いすに乗った高齢の被爆者、喪服で合掌する遺族の姿は、80年という歳月の重みを物語っていた。
被爆3世の女性は、約2時間かけて原爆慰霊碑からドームまでを回り手を合わせながら、「戦争で苦しむのは市民。世界平和を望む」と涙ながらに語った。この言葉は、現在ウクライナやガザで苦しむ人々への共感も込められていた。
世界平和実現への長い道のり
被爆80年の「原爆の日」は、過去最多の国際参加を得て、広島の平和メッセージが世界により広く届いたことを示した。しかし、現実の国際情勢は依然として厳しく、核兵器廃絶への道のりは険しい。
それでも、120カ国・地域の代表者が一堂に会し、平和への祈りを共有したこの日は、人類が核兵器のない世界を諦めていないことの証明でもある。広島から発信された平和への願いが、世界中の人々の心に届き、一人でも多くの人が平和実現のために行動を起こすきっかけとなることを願ってやまない。