トランプ大統領、6年ぶり来日
2025年10月27日午後5時頃、米国のドナルド・トランプ大統領を乗せた大統領専用機エアフォースワンが羽田空港に着陸しました。トランプ大統領の訪日は2019年5月以来約6年ぶりとなり、3回目の大統領就任後初めての日本訪問となります。訪日期間は10月27日から29日までの3日間で、東京を中心に複数の重要な外交日程が組まれています。
訪日の最大の目的は、10月21日に日本初の女性首相として就任した高市早苗首相との首脳会談です。高市首相にとっても、就任からわずか約1週間での日米首脳会談は、自身の外交手腕を内外に示す重要な機会となります。
天皇陛下との温かな再会
トランプ大統領は10月27日午後6時30分頃、皇居の御所を訪れ、天皇陛下との会見に臨みました。これは2019年5月にメラニア夫人とともに国賓として来日して以来、約6年半ぶり2度目の会見となります。
宮内庁によると、会見は約30分間行われ、最初から和やかな雰囲気に包まれました。天皇陛下は玄関でトランプ大統領を笑顔で出迎え、握手を交わしました。陛下は通訳を介さず直接英語で「I am delighted to meet you again」と声をかけられました。
会見では、ドジャースの大谷翔平選手の話題も登場。陛下はトランプ大統領が大谷選手を称賛していることに触れ、「米国社会が日本人選手を受け入れてくれていることに感謝します」と述べられました。トランプ大統領は山本由伸投手にも言及し、「日本人投手も非常に良かった」と応じました。
さらに、陛下は2019年にトランプ大統領から贈られたビオラについて「とても良い音色で気に入っています。時々演奏しています」と明かされました。会見の最後には、トランプ大統領が天皇皇后両陛下をホワイトハウスに招待し、陛下も快く応じられました。午後7時頃に会見を終えたトランプ大統領は、報道陣の前で天皇陛下を「Great Man」と称賛しました。
高市早苗首相との歴史的会談
10月28日午前、東京・元赤坂の迎賓館で、高市早苗首相とトランプ大統領による対面では初めての日米首脳会談が行われます。これは日本史上初の女性首相による日米首脳会談として、歴史的な意義を持つ会談となります。
事前の電話会談で築かれた信頼関係
両首脳は、10月25日に既に電話で初めて協議を行っていました。マレーシア滞在中だった高市首相は約10分間の電話会談で、トランプ大統領に「日米同盟の強化は私の政権で外交・安全保障の最重要事項だ」と明確に伝えました。トランプ大統領も「日米同盟をさらなる高みに引き上げる」と応じ、両首脳は同盟強化で一致しました。
電話会談後、トランプ大統領は記者団に対し「素晴らしい会談だった。彼女は美しい。間もなく会う予定だ。安倍氏とも非常に親しい間柄だ」と述べ、高市首相を「偉大な人物だった安倍氏の親友だ。安倍氏は私の親友で、彼女をとても気に入っていた」と高く評価しました。
首脳会談の重要議題
28日の首脳会談では、以下の重要議題が話し合われる見通しです。
1. 安全保障・防衛力強化
中国の威圧的行動により東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟の一層の強化が最重要テーマとなります。高市首相は「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定前倒しを含め、日本が主体的に防衛力強化に取り組む方針を説明します。防衛費の増額や反撃能力を高める施策についても詳しく説明される予定です。
2. 自由で開かれたインド太平洋(FOIP)
高市首相は「日本は米国の対中国、インド太平洋戦略にとって非常に重要な国だ」と強調し、「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現へ向けた連携を呼びかけます。これは地域の平和と安定を維持するための両国の戦略的パートナーシップを確認する重要な議題です。
3. 北朝鮮問題と拉致被害者
高市首相は、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向けて、トランプ大統領の協力を要請します。この問題は日本にとって最重要課題の一つであり、米国の理解と支援が不可欠です。
4. 経済・貿易協力
日本の対米投資・貸付制度の履行確認、関税・輸出入政策、半導体・医薬品などの先端技術分野における政策調整が議題となります。特に造船分野での協力強化も申し合わせる見通しです。両政府は会談の成果をまとめた共同文書を発出する方向で調整を進めています。
横須賀基地での演説予定
10月28日午後、トランプ大統領は神奈川県の米軍横須賀基地を訪問し、演説を行う予定です。横須賀基地は米海軍艦隊と同盟国の海軍艦隊が並んで司令部を置く世界で唯一の港として知られています。
2019年5月の訪日時には、トランプ大統領は海上自衛隊の護衛艦「かが」を視察しました。米大統領が自衛隊の艦艇に乗るのは初めてのことで、その後、米軍強襲揚陸艦「ワスプ」に移り、米兵を前に「私たちには力による平和が必要だ」「日米同盟はかつてないほどに強固だ」と演説しました。今回の訪問でも、日米同盟の重要性を強調し、中国や北朝鮮をにらんだ安全保障協力の強化を訴えるものと見られています。
「サナエ」がキーワード?トランプ外交の戦略
トランプ大統領は高市首相を「Sanae」というファーストネームで呼んでおり、これが今回の日米外交のキーワードになるとの見方があります。トランプ氏はかつて安倍晋三元首相を「シンゾー」と呼んで親密な関係を築きました。高市首相を「サナエ」と呼ぶことで、安倍氏との時のような個人的な信頼関係を構築しようとしていると分析されています。
実際、トランプ大統領は高市氏について「本当に素晴らしく美しい人」と極めて高く評価し、「シンゾーに最も近い後継者」とも表現しています。高市首相自身も安倍元首相の政治理念を継承する姿勢を明確にしており、トランプ大統領との信頼関係構築に有利な立場にあると言えます。
日本初の女性首相が挑む外交デビュー
高市早苗首相にとって、就任後わずか1週間でのトランプ大統領との首脳会談は、外交手腕を試される重要な場となります。日本の憲政史上初めての女性首相として、また保守強硬派として知られる高市氏が、どのようにトランプ大統領と渡り合い、日米同盟を強化していくのか、国内外から大きな注目が集まっています。
高市首相は10月21日の組閣本部で、日本維新の会の吉村洋文代表と会談し、自民党と維新の連立内閣を発足させました。この新しい政治体制のもと、高市首相はトランプ大統領との良好なムードを演出することで、自らの外交能力を内外に示すことができれば、政権基盤の強化にもつながると見られています。
今後の展開と韓国訪問
トランプ大統領は10月29日午前に日本を出発し、韓国を訪問する予定です。日本での3日間の滞在を通じて、日米同盟の強化を確認し、インド太平洋地域における米国のコミットメントを示すことになります。
今回の訪日が、日米両国にとってどのような成果をもたらすのか、そして高市首相の外交デビューがどのように評価されるのか、世界が注目しています。歴史的な女性首相の誕生と、トランプ大統領の6年ぶりの来日が重なった2025年10月は、日米関係の新たな章の始まりとして記憶されることでしょう。
まとめ:日米同盟の新時代へ
トランプ大統領の来日と高市早苗首相との首脳会談は、日米同盟にとって重要な転換点となります。日本初の女性首相の誕生、中国の台頭による東アジア情勢の変化、そしてトランプ政権の外交方針という3つの要素が交わる中で、両首脳がどのような未来を描くのか、その行方が注目されます。
天皇陛下との温かな再会、高市首相との歴史的会談、そして横須賀基地での演説を通じて、トランプ大統領は日米関係の重要性を改めて世界に示しました。この訪日が、両国のさらなる絆の強化につながることが期待されています。
