2025年ワールドシリーズMVP、山本由伸の歴史的快挙

2025年11月1日(日本時間2日)、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手が、ワールドシリーズMVPを獲得した。日本人選手がこの栄誉に輝いたのは、2009年の松井秀喜氏(ヤンキース)以来16年ぶり、史上2人目の快挙となる。ワールドシリーズ第7戦で、ドジャースはトロント・ブルージェイズを延長11回の末に5対4で破り、球団史上初となる世界一連覇を達成した。この歴史的瞬間を支えたのが、山本由伸投手の前代未聞のパフォーマンスだった。

3勝0敗、防御率1.02という圧倒的な数字

山本由伸投手は、ワールドシリーズで3登板3勝0敗、防御率1.02、15奪三振という驚異的な成績を記録した。総投球回数17回2/3で、わずか2失点という安定感は、チームメイトや相手選手からも信じられないと称賛された。被安打はわずか9本、四球はたった2つという完璧に近いコントロールを披露し、相手打者を圧倒し続けた。ワールドシリーズで3勝を挙げてMVPに選ばれたのは、2001年のランディ・ジョンソン氏以来24年ぶりの快挙である。また、投手がワールドシリーズMVPを獲得するのは、2019年のスティーブン・ストラスバーグ以来6年ぶりとなる。

第2戦から第7戦まで、すべてが伝説

第2戦:完投勝利の衝撃
山本由伸は第2戦で9回1失点の完投勝利を飾った。8奪三振を記録し、プレーオフでの2戦連続完投という快挙も成し遂げた。現代野球では完投が珍しくなっている中で、ワールドシリーズという最高峰の舞台で完投したことは、山本の体力とメンタルの強さを証明した。投球内容も素晴らしく、ストレートは平均時速152キロ、最速157キロを記録。スプリットやカーブなどの変化球も冴え渡り、相手打者は完全に翻弄された。

第6戦:チームを救った6回1失点
3勝2敗とリードを許していたドジャースにとって、第6戦は絶対に落とせない一戦だった。敵地カナダでのアウェイゲームという厳しい状況の中、山本は6回96球を投じ、わずか1失点に抑える好投を見せた。6奪三振を記録し、相手打線を翻弄した山本の投球は、背中でチームを引っ張るエースの投球だった。この試合を3勝3敗のタイに持ち込んだことで、ドジャースは最終戦に希望をつないだ。試合後、チームメイトたちは山本を称え、彼がいなければここまで来れなかったと口を揃えた。

第7戦:中0日での神リリーフ
最も驚異的だったのが、第7戦での登板である。前日に96球を投げていた山本を、ロバーツ監督は中0日で投入するという大胆な決断を下した。通常、先発投手が翌日に登板することはほとんどなく、特にワールドシリーズという重要な場面では異例中の異例である。先発の大谷翔平が3回途中で3失点を喫し降板し、チームは苦しい展開に。その後も4対3とリードを許していた9回1死満塁の場面で、山本由伸がマウンドに上がった。敵地の観客2万7000人以上が固唾を飲んで見守る中、山本は冷静さを失わず、バーショを二ゴロに打ち取り2死に。続くクレメントの大飛球も、中堅に入った直後のパヘスが好捕してピンチを脱した。

その後、9回裏にミゲル・ロハスの同点本塁打で追いつき、延長11回表にウィル・スミスが決勝ソロを放って勝ち越した。山本は2回2/3を無失点に抑え、2試合連続勝利投手となった。ワールドシリーズ第6戦に先発し、第7戦にリリーフ登板するのは、ピート・アレクサンダー(1926年)、ランディ・ジョンソン(2001年)以来という歴史的な登板となった。約100年の歴史の中で、わずか3人しか成し遂げていない偉業である。

自信なかったけど、できることは全部できました

試合後のセレモニーで、山本由伸投手は笑顔でこう語った。ブルペンにいくまで投げられるか自信なかったですけれど。もう分からないですけれど最高です。できることは全部できましたし、このチームで優勝できて本当にうれしく思います。連投で臨んだ第7戦では34球を投じたが、体のことは考えず、目の前の打者に集中しましたと振り返った。疲労の色を見せず、むしろ気迫に満ちた表情でマウンドに立ち続けた姿は、多くの野球ファンの心を掴んだ。ロバーツ監督も試合後、由伸は本当に信じられない投手だ。彼がいなければ、この連覇はなかった。彼の精神力とスキルは、私が見てきた中で最高レベルだと絶賛した。

松井秀喜以来、日本人2人目の偉業

2009年、松井秀喜氏はワールドシリーズで打率.615、3本塁打、8打点を記録し、日本人初のワールドシリーズMVPを獲得した。特に第6戦では4打数3安打6打点という圧倒的なパフォーマンスを見せ、ヤンキースを27年ぶりの世界一に導いた。この活躍は、日本の野球ファンに大きな感動を与え、今でも語り継がれている。当時、松井の活躍は日本中を熱狂させ、テレビの視聴率は深夜にもかかわらず50パーセントを超えた。

今回の山本由伸は、投手として松井秀喜に続く快挙を成し遂げた。野手と投手というポジションの違いはあれど、両者に共通するのは勝負所での強さである。プレッシャーのかかる場面で最高のパフォーマンスを発揮できる精神力は、トップアスリートの証だ。日本のスポーツ史において、この2人の名前は特別な輝きを放っている。ニューヨークの地元紙デイリー・ニューズは松井の活躍をワールドシリーズのベストパフォーマンス歴代7選に選出しており、山本のパフォーマンスも間違いなく歴史に刻まれるだろう。

オリックスからMLBへ、12年465億円の道のり

山本由伸投手は、2017年にドラフト4位でオリックス・バファローズに入団した。宮崎県都城高校出身の山本は、高校時代から注目されていたが、プロ入り後も順調に成長を続けた。入団1年目は二軍で経験を積み、2年目から一軍で本格的に活躍を始めた。2021年から2023年まで3年連続でリーグ最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、勝率第1位の4冠と沢村賞を獲得し、オリックスをパ・リーグ3連覇に導いた。この3年間の成績は、日本球界史上でも類を見ない圧倒的なものであり、平成の怪物と呼ばれた。特に2023年は17勝5敗、防御率1.21という驚異的な数字を残し、パ・リーグMVPにも選出された。

2023年12月、山本はロサンゼルス・ドジャースと契約期間12年、総額3億2500万ドル(約463億円)という、投手としてMLB史上最高額かつ最長契約を結んだ。この契約には5000万ドル(約71億円)の契約金が含まれており、オリックスへの譲渡金は約72億円となった。この金額は、当時の日本人選手としても過去最高額であり、山本への期待の大きさを物語っている。MLBデビュー1年目の2024年は適応に時間がかかったものの、11勝7敗、防御率3.45を記録し、新人王候補にもなった。2年目となる2025年、山本は期待に応える活躍を見せた。レギュラーシーズンでは16勝8敗、防御率2.85を記録し、オールスターにも選出された。そしてポストシーズンでは防御率1.45、対戦打者打率.143という圧倒的な数字で、ドジャースの連覇に貢献した。この2年間で、山本は完全にメジャーリーグのトップピッチャーの仲間入りを果たした。

視聴者数2598万人、歴史的な夜

ワールドシリーズ第7戦の視聴者数は、テレビ放送とストリーミング配信の合計で2598万人を記録した。これは2017年ワールドシリーズ第7戦の記録(2824万人)に次ぐ、8年ぶりの高視聴率となった。近年、スポーツ中継の視聴者数が減少傾向にある中で、この数字は異例の高さである。カナダでは国民の約45パーセントが視聴したと報じられており、ブルージェイズがワールドシリーズに進出したことで、カナダ全土が熱狂した。トロントの街中ではパブリックビューイングが開催され、数万人のファンが集まった。北米全体が注目した歴史的な夜に、山本由伸は主役を務めた。日本でも深夜にもかかわらず、多くの野球ファンがテレビやインターネットで試合を観戦し、SNSでは山本由伸がトレンド入りした。

日本球界からも祝福の声続々

山本のMVP獲得を受けて、日本球界からも祝福の声が相次いだ。元オリックス監督の中嶋聡氏は由伸の活躍は誇りです。あのプレッシャーの中で結果を出す精神力は、オリックス時代から培われたもの。彼の成長を見守ってきた身として、本当にうれしいとコメント。WBC2023で共に戦ったダルビッシュ有投手(パドレス)も本当におめでとう。日本の誇りだ。これからも一緒に頑張ろうとSNSで祝福した。また、イチロー氏も由伸の投球は芸術的だった。日本人として誇らしいとコメントを寄せた。元メジャーリーガーの野茂英雄氏も素晴らしいピッチングだった。日本人投手の可能性を示してくれたと称賛した。

ドジャース、球団史上初の連覇達成

ドジャースは2024年に続き、2025年もワールドシリーズを制覇し、球団史上初となる連覇を達成した。MLB全体で見ても、ワールドシリーズ連覇は2000年のヤンキース以来25年ぶりの快挙となる。ドジャースは1955年の球団創設以来、数々の名選手を輩出してきたが、連覇は今回が初めてだ。大谷翔平、山本由伸、そしてムーキー・ベッツやフレディ・フリーマンといったスター選手が揃うドジャースは、史上最強との呼び声も高い。特に、大谷翔平と山本由伸という日本人のエース2人が揃うチームは、日本の野球ファンにとっても特別な存在だ。来季の3連覇にも期待がかかる。球団オーナーもこのチームで王朝を築きたいと意気込みを語った。

まとめ:新時代を切り開いた山本由伸

山本由伸投手のワールドシリーズMVP獲得は、日本球界にとって16年ぶりの快挙であり、日本人投手としては史上初の偉業である。3勝0敗、防御率1.02という圧倒的な数字、そして中0日での伝説的なリリーフ登板は、野球史に永遠に刻まれるだろう。この偉業は、今後何十年にもわたって語り継がれることになる。できることは全部できましたと語った山本の笑顔は、日本中の野球ファンに感動と勇気を与えた。彼の謙虚さと強さが融合したパフォーマンスは、多くの人々にインスピレーションを与え続けるだろう。これからも山本由伸の活躍から目が離せない。次のシーズンも、さらなる進化を遂げた山本の投球が楽しみだ。そして、この快挙が、次世代の日本人選手たちに夢と希望を与えることを願っている。

投稿者 hana

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