2026年元旦、都内で80代女性が餅を詰まらせ死亡
2026年の新年早々、東京都内で餅による痛ましい窒息事故が発生しました。1月1日から3日にかけての正月三が日に、80歳から96歳までの7名が餅を喉に詰まらせて救急搬送され、そのうち80代の女性1名が死亡する事態となりました。東京消防庁によると、死亡した女性は港区在住で、元旦の早朝に自宅で大福を食べた際に窒息し、搬送先の病院で亡くなったとのことです。
さらに深刻なことに、80代の男女3名と90代の男性2名の計5名が意識不明の重体となっており、予断を許さない状況が続いています。元旦だけでも4名が緊急搬送されており、新年の喜びが一転して悲劇となった家族の心痛は計り知れません。
正月三が日に集中する餅の窒息事故─その実態
餅による窒息事故は、毎年正月に繰り返される深刻な問題です。東京消防庁の過去5年間(2020-2024年)のデータによると、餅を詰まらせて救急搬送された人の約70%が中等症以上と診断され、その中には生命の危険がある重篤なケースも含まれています。事故は1月と12月に集中しており、食品による窒息死の半数以上がこの2ヶ月間、特に元旦(1月1日)に発生しているのが特徴です。
消費者庁の統計では、食品による窒息事故で毎年約4,700人が亡くなり、そのうち餅による死者は年間約300人に上ります。特に65歳以上の高齢者が全体の約90%を占めており、加齢に伴う噛む力や飲み込む力の低下が主な原因となっています。餅は粘着性が高く、一度喉に詰まると呼吸が完全に遮断されるため、わずか数分で命に関わる状態に陥る危険性があります。
なぜ餅は窒息事故を起こしやすいのか─医学的な理由
餅が窒息事故を引き起こしやすい理由は、その特殊な物理的性質にあります。餅は粘着性が高く、噛んでも完全には細かくならず、喉に張り付きやすい特性を持っています。また、温度が下がると硬くなり、逆に温かいと柔らかくなりすぎて形が変わりやすく、どちらの状態でも誤嚥のリスクが高まります。
医療専門家によると、高齢者は加齢により以下のような身体機能の低下が起こります。まず、咀嚼筋(噛む力を司る筋肉)の筋力が低下し、食べ物を十分に細かくできなくなります。次に、唾液の分泌量が減少するため、食べ物が喉を通りにくくなります。さらに、嚥下反射(飲み込む反射)が鈍くなり、気管に食べ物が入っても咳で排出する力が弱まります。そして、喉頭蓋(食べ物が気管に入るのを防ぐ蓋のような器官)の機能が低下し、誤嚥しやすくなります。
これらの機能低下は個人差が大きく、本人も家族も気づかないうちに進行していることが多いため、「去年は大丈夫だったから今年も大丈夫」という油断が事故につながるケースが後を絶ちません。
高齢医療のプロが警告する「餅を詰まらせやすい瞬間」
高齢者医療の専門家によると、餅を詰まらせる事故には特定のパターンがあります。最も危険なのは「会話しながら食べる」瞬間です。お正月は家族が集まり、楽しく会話しながら食事をする機会が多いですが、話しながら食べると喉頭蓋が正常に閉じず、食べ物が気管に入りやすくなります。
また、「テレビを見ながら食べる」「急いで食べる」「大きな塊のまま飲み込む」といった行為も非常に危険です。特に「気をつけて」と声をかけられた瞬間に、かえって緊張して飲み込みのタイミングを誤るケースもあるため、食事中は過度な注意喚起も避けるべきだと専門家は指摘しています。
さらに、「餅を詰まらせて搬送される人」には共通点があります。それは、自分の噛む力や飲み込む力の低下を自覚していないこと、少量の水やお茶で流し込もうとすること(これは逆効果)、一人で食事をしていること、入れ歯の調子が悪いのに我慢していること、などです。
命を守る5つの対策─家庭でできる窒息事故防止法
東京消防庁と医療専門家が推奨する、餅による窒息事故を防ぐための具体的な対策を紹介します。
対策1: 餅を小さく切る─1cm角が目安
餅は必ず小さく切ってから食べましょう。理想的なサイズは1cm角以下です。「小さすぎると食べた気がしない」という声もありますが、命には代えられません。切り餅を縦横に4等分し、さらに薄くスライスする方法が推奨されています。雑煮に入れる場合も、焼く前に小さく切っておくことが重要です。
対策2: よく噛んで食べる─1口30回以上
餅は最低でも1口30回以上噛んでから飲み込みましょう。唾液と十分に混ざることで、粘着性が下がり飲み込みやすくなります。急いで食べると窒息のリスクが跳ね上がるため、時間に余裕を持って食事をすることが大切です。
対策3: 水分を先に取る─口と喉を潤す
餅を食べる前に、お茶や水を飲んで口と喉を潤しておきましょう。ただし、餅を口に入れた後に水で流し込むのは厳禁です。餅が水を吸って膨張し、さらに詰まりやすくなる危険性があります。水分補給は餅を食べる「前」と「完全に飲み込んだ後」に行ってください。
対策4: 一人で食べない─見守りが命を救う
高齢者が餅を食べる際は、必ず誰かが一緒にいるようにしましょう。万が一詰まらせた場合、すぐに119番通報し、救急車が到着するまでの応急処置(背部叩打法や腹部突き上げ法)を行うことが生死を分けます。一人暮らしの高齢者の場合は、家族や親戚が訪問する時間帯に食べるようにするなどの工夫が必要です。
対策5: 代替食品を検討する─リスクを避ける選択
近年、窒息リスクの低い「やわらか餅」や「とろみ付き餅」などの商品が開発されています。これらは通常の餅に比べて粘着性が低く、高齢者でも安全に食べられるよう設計されています。また、餅の代わりに白玉団子や求肥、餅入りスープなど、より安全な選択肢もあります。「お正月には必ず餅を食べなければならない」という固定観念を捨て、安全を最優先に考えることが重要です。
もし餅を詰まらせてしまったら─緊急時の応急処置法
万が一、目の前で誰かが餅を詰まらせてしまった場合、迅速な対応が命を救います。日本医師会が推奨する応急処置の手順を紹介します。
まず、意識がある場合は「背部叩打法」を試みます。詰まらせた人を前かがみにさせ、肩甲骨の間を手のひらの付け根で力強く4〜5回叩きます。この衝撃で詰まったものが飛び出す可能性があります。
背部叩打法で効果がない場合は「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」を行います。後ろから抱きかかえるように腕を回し、片方の手で握りこぶしを作ってへその上に当て、もう片方の手でそのこぶしを握り、素早く手前上方に突き上げます。ただし、妊婦や乳幼児には行わないでください。
意識がない場合や、応急処置を行っても改善しない場合は、ただちに119番通報し、AED(自動体外式除細動器)の使用と心肺蘇生(CPR)を開始します。救急隊が到着するまでの数分間の対応が、生死を分ける可能性があるため、家族全員が基本的な応急処置を学んでおくことが推奨されます。
全国で呼びかけられる注意喚起─餅の窒息事故をなくすために
消費者庁は毎年12月下旬から1月上旬にかけて、餅による窒息事故への注意を呼びかけています。2025年12月にも「年末年始、餅による窒息事故に御注意ください」という緊急リリースを発表し、高齢者のいる家庭に特に警戒を促しました。
また、地域によって餅による窒息死のリスクに差があることも明らかになっています。専門家の研究によると、餅を食べる習慣が根強い地域ほどリスクが高い傾向にあり、特に東日本で事故が多く報告されています。これは雑煮文化の違いや、餅の硬さの地域差が影響していると考えられています。
医療機関でも、正月三が日は餅による窒息事故に備えて救急体制を強化しています。しかし、最も重要なのは「事故を起こさないこと」です。家族全員が餅のリスクを正しく理解し、安全な食べ方を実践することで、悲劇は防げるのです。
まとめ─伝統を守りながら命も守る
餅は日本の伝統的な正月食であり、多くの人にとって欠かせない存在です。しかし、2026年元旦の事故が示すように、その伝統が命を奪う危険性をはらんでいることも事実です。
大切なのは、「餅を食べない」ことではなく、「安全に食べる」ことです。小さく切る、よく噛む、水分を取る、一人で食べない、代替品を検討する─これらの対策を実践することで、餅の窒息事故は大幅に減らすことができます。
今年の正月で家族を失った遺族の悲しみを無駄にしないためにも、私たち一人ひとりが餅のリスクを正しく認識し、大切な人の命を守る行動を取ることが求められています。伝統を守りながら、同時に命も守る─その両立こそが、現代の私たちに課せられた責任なのです。
