外国人留学生優遇問題のアイキャッチ画像

あなたは今、奨学金をいくら返済していますか?

毎月17,000円――これが、日本人学生の奨学金返済額の平均だ。14.7年間、社会人になってからも続くこの支払い。一方で、外国人留学生の中には、返済義務なしで総額1000万円もの支援を受けている人々がいる。

2025年7月19日、参議院選挙を明日に控え、この「格差」がSNS上で爆発的に拡散している。「なぜ私たちは借金を背負い、彼らは無償で支援を受けるのか」――若者たちの怒りの声が、政治を動かし始めた。

参院選で浮上した「外国人留学生優遇」論争の真相

20日投開票の参議院選挙を控え、SNS上で「外国人留学生への優遇」を巡る議論が急速に拡散している。特に注目を集めているのが、「日本人学生が奨学金返済に苦しむ一方で、中国人留学生には返済義務なしの奨学金1000万円が支給されている」という言説だ。

この問題は、単なるデマや誤解として片付けられない複雑な背景を持っている。本記事では、外国人留学生支援制度の実態と、日本人学生が直面する奨学金問題の現実を、最新データと共に徹底検証する。

「返済不要1000万円」の根拠となる制度の実態

次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)の衝撃

2025年に明らかになったデータによると、「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」では、博士課程の学生に年間最大290万円が支給されている。これを3〜4年間受給すると、総額は約1000万円に達する。しかも、この支援金は返済不要だ。

2024年度の受給者10,564人のうち、外国人は4,125人(約39%)を占め、その中で中国人留学生は2,904人に上る。日本にいる外国人留学生約14万人のうち、中国人が約6万人(約40%)を占めることを考慮しても、この比率は際立っている。

国費外国人留学生制度の全貌

さらに注目すべきは、文部科学省が運営する「国費外国人留学生制度」だ。2025年現在の月額支給額は以下の通りである:

学生種別 月額支給額 年間支給額
学部留学生 117,000円 約140万円
修士課程 144,000円 約173万円
博士課程 145,000円 約174万円

これに加えて、授業料・入学金は文部科学省が全額負担し、往復航空券も支給される。学部4年間で総額約1000万円の支援となる計算だ。

日本人学生の過酷な現実

平均310万円の借金を背負う若者たち

一方、日本人学生の状況は深刻だ。労働者福祉中央協議会の調査(回答者2,200人)によると、奨学金の平均借入額は310万円に上る。さらに衝撃的なのは、奨学金利用者の26.9%が「返済の遅延を経験したことがある」と回答していることだ。

NPO法人POSSEなどが2022年9月に実施した調査(回答者3,121人)では、実に10%の人が「自己破産を検討したことがある」と答えている。

若者を追い詰める「奨学金破産」の連鎖

日本学生支援機構の発表によると、2012年から2016年の間に奨学金債務が自己破産によって免責された件数は以下の通りだ:

  • 本人による自己破産:8,108件
  • 連帯保証人による自己破産:5,499件
  • 保証人による自己破産:1,731件

武蔵大学の大内裕和教授は、「最近は『名ばかり正社員』(周辺正社員)が増えている」と指摘する。年収400万円未満(手取り約320万円)の正社員が、特にIT、流通、外食、学習塾業界で増加しているという。

制度の矛盾と批判の声

わずか3%という反論の落とし穴

外国人留学生支援を擁護する声は、「国費留学生は全留学生の約3.2%(2023年度は279,274人中9,182人)に過ぎない」と主張する。確かに、この数字自体は事実だ。

しかし、この「3%」という数字の裏側には重要な事実が隠されている。国費留学生の中で中国人が占める割合は約9%(年間約800人)だが、これは国費留学生制度だけの話だ。前述のSPRINGプログラムや、各大学独自の奨学金制度を含めると、支援を受ける外国人留学生の実数はさらに増える。

政治家も動き出した制度改革

2025年3月、参議院議員の有村治子氏が国会質問でこの問題を取り上げた。文部科学省は「2025年夏までに制度の見直しを行い、日本人学生への支援策を明確化する」と約束したが、具体的な改革案はまだ示されていない。

なぜ外国人留学生が優遇されるのか

少子化に苦しむ大学の生存戦略

この問題の背景には、日本の大学が直面する構造的な課題がある。少子化により日本人学生が減少する中、特に地方大学は外国人留学生なしには経営が成り立たない状況に陥っている。

ある地方私立大学の関係者は匿名を条件に次のように語る。「正直なところ、留学生がいなければ学部自体を閉鎖せざるを得ない。彼らは大学にとって『救世主』なんです」

国家戦略としての留学生受け入れ

また、政府は「留学生30万人計画」を掲げ、優秀な外国人材の獲得を国家戦略として位置づけている。アメリカ、ドイツ、韓国など他の先進国も、公的奨学金で留学生を誘致しており、これは国際的な人材獲得競争の一環だという見方もある。

見過ごされる日本人学生への支援策

知られていない救済制度

実は、日本人学生向けの支援制度も存在する。日本学生支援機構は以下の制度を用意している:

制度名 内容 条件
減額返還制度 月々の返済額を1/2または1/3に減額 経済困難を証明する書類が必要
返還期限猶予 最長10年間返済を猶予 年収300万円以下
返還免除 死亡・心身障害の場合は全額免除 医師の診断書等が必要

しかし、これらの制度の認知度は低く、利用者も限定的だ。

2025年から始まる新たな支援

政府は2025年から、多子世帯を対象とした新たな給付型奨学金制度の拡充を発表している。しかし、その恩恵を受けられるのは一部の学生に限られ、根本的な解決にはほど遠い。

この問題が投げかける本質的な問い

公平性とは何か

外国人留学生支援問題は、単純な「日本人vs外国人」という対立構造で捉えるべきではない。むしろ、この問題が浮き彫りにするのは、日本の高等教育政策全体の歪みだ。

本来、教育は国の未来への投資であるはずだ。しかし現実には、日本人学生の多くが「借金」として教育費を負担し、社会人になってからも長期間にわたって返済に苦しんでいる。

求められる抜本的改革

専門家からは、以下のような改革案が提案されている:

  • 日本人学生への給付型奨学金の大幅拡充
  • 所得連動返還型奨学金制度の改善
  • 大学授業料の段階的無償化
  • 外国人留学生支援の透明性向上と説明責任の強化

参院選が問う「誰のための政治か」

2025年7月20日の参議院選挙では、この問題が重要な争点の一つとなっている。各政党は、外国人政策と教育支援のバランスをどう取るか、明確なビジョンを示すことが求められている。

ある野党候補者は街頭演説で「日本の若者が奨学金という名の借金に苦しむ一方で、外国人留学生には手厚い支援。これが本当に公平な社会と言えるのか」と訴えた。

一方、与党側は「国際競争力の観点から、優秀な外国人材の確保は不可欠。同時に日本人学生への支援も拡充していく」と主張している。

私たちにできること

まずは現実を知ることから

この問題に対して、私たち一人一人ができることは何だろうか。まず重要なのは、感情的な対立を煽るのではなく、制度の実態を正確に理解することだ。

SNS上では断片的な情報や誤解に基づく議論が散見される。しかし、本当に必要なのは、データに基づいた冷静な議論と、建設的な解決策の模索だ。

声を上げ続けることの重要性

若者の投票率の低さは、政治が若者の声を軽視する一因となっている。特に奨学金問題は、当事者である若者自身が声を上げなければ、改善は期待できない。

NPO法人POSSEの岩本菜々氏は「奨学金返済に苦しむ人々の相談を受ける中で、多くの人が『自己責任』と思い込んで孤立していることに気づいた。これは個人の問題ではなく、社会全体で解決すべき構造的問題だ」と強調する。

おわりに:分断を超えて

外国人留学生支援問題は、日本社会が抱える様々な矛盾の縮図と言える。少子高齢化、大学経営の危機、若者の貧困、国際競争力の低下――これらの問題が複雑に絡み合い、現在の状況を生み出している。

重要なのは、外国人留学生と日本人学生を対立させることではない。むしろ、両者がともに学び、成長できる環境をいかに作るかが問われている。

2025年の参議院選挙は、この問題に対する国民の意思を示す重要な機会となる。私たち一人一人が、感情論ではなく事実に基づいて判断し、未来の日本の教育のあり方を選択する時が来ている。

教育への投資は、国の未来への投資だ。その投資が、国籍を問わず全ての学生に公平に行き渡る社会こそ、真に豊かな社会と言えるのではないだろうか。

投稿者 hana

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