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給料上がらないなら頑張らない!44.5%が選ぶ「静かな退職」の衝撃

あなたも心当たりはありませんか?「頑張っても給料が上がらない」「評価されているのか分からない」「定時で帰って何が悪い」ーーそんな思いを抱えながら、必要最低限の仕事だけをこなす日々。

2025年最新調査で明らかになった衝撃の事実。日本の正社員の44.5%が「静かな退職」を実践していることが判明した。昇進や昇給を求めず、最小限の労働に留める働き方が、いま日本中で急速に広がっている。

マイナビキャリアリサーチLabが2025年4月に発表した調査によると、世代を問わず4割以上が実践。特に驚くべきは、20代(46.7%)に次いで50代(45.6%)が高い割合を示したことだ。欧米では若者中心の現象とされる「静かな退職」が、日本では全世代の”新常識”になりつつある。

「静かな退職」とは何か?誤解されやすい2つの言葉

「静かな退職(Quiet Quitting)」は、実際に退職するわけではない。必要最低限の仕事だけをこなし、それ以上の努力や貢献を意図的に行わない働き方を指す。残業を断り、新しいプロジェクトへの参加を避け、昇進のチャンスがあっても興味を示さない。

一方、「サイレント退職」は突然無断で会社を辞める行為を指し、全く別の問題だ。この2つは混同されやすいが、「静かな退職」は在職しながら最小限の労働に留める選択的な働き方である。

データが示す衝撃の給与格差

なぜこれほど多くの人が「静かな退職」を選ぶのか。その背景には、努力が報われない現実がある。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、大卒男性の平均年収は30歳で約450万円、40歳でも約600万円。10年間必死に働いても、年収は150万円しか増えない計算だ。

「月収で考えると、10年頑張っても月12万円程度しか増えない。手取りだと8万円くらい。これで家族を養い、住宅ローンを払い、子供の教育費を出せというのは無理がある」(35歳・製造業勤務)

4つのタイプに分類される「静かな退職者」

タイプ 特徴 主な年代 心の声
A:ミスマッチ型 仕事内容や環境が合わない 40代・50代に多い 「もう限界…」
B:評価不満型 待遇や評価に不満 40代・50代に多い 「正当に評価されない」
C:コスパ重視型 労力に見合わない報酬と判断 20代・30代に多い 「割に合わない」
D:無関心型 もともと昇進に興味なし 20代・30代に多い 「出世に興味ない」

なぜ今「静かな退職」が広がるのか?3つの要因

1. 給与への不満が45.4%でトップ

調査によると、「給与・報酬が期待に合わない」(45.4%)が最大の不満要因。特に20代では52.9%と半数を超える。30年間賃金が上がらない日本で、努力しても報われないと感じる人が増えている。

「残業して成果を出しても、給料は変わらない。だったら定時で帰って副業した方がマシ。実際、副業の方が本業より稼げるようになった」(28歳・IT企業勤務)

2. 評価基準の不透明さ(33.5%)

「評価・昇進基準が不明確」と感じる人が3人に1人。年功序列が崩れつつある中、新しい評価制度も機能していない企業が多い。努力の方向性が見えず、モチベーションを失う社員が続出している。

実際、ある大手企業の人事部長は匿名を条件にこう語る。「正直、我々も明確な評価基準を作れていない。成果主義と言いながら、結局は上司の好き嫌いで決まることも多い」

3. ワークライフバランスの価値観変化とAI活用

コロナ禍を経て、仕事以外の時間の大切さに気づいた人が急増。さらに、ChatGPTなどのAIツールを活用することで、仕事を効率化し、余った時間を自己投資に回す人も増えている。

「AIを使えば8時間の仕事が4時間で終わる。でも、早く終わっても給料は変わらない。だったら、定時まで適当に時間を潰すか、こっそり副業の準備をする」(32歳・マーケティング職)

世代別に見る「静かな退職」の実態

20代:コスパ重視の合理的選択

20代の46.7%が実践する「静かな退職」。彼らにとってそれは「賢い選択」だ。最初から昇進を諦め、プライベートを充実させる。副業やスキルアップの時間を確保し、会社に依存しない生き方を模索している。

  • 「出世しても責任が増えるだけ。部長の年収を聞いたら、責任の重さに見合わない」
  • 「定時で帰って副業すれば、残業代より稼げる。しかもスキルも身につく」
  • 「会社での評価より、SNSのフォロワー数やYouTubeの再生回数の方が将来役立つ」

50代:諦めと現実的な選択

意外にも45.6%と高い割合を示した50代。役職定年や昇進の頭打ちを経験し、「もう頑張っても仕方ない」という諦めが広がっている。定年までの残り時間を、ストレスなく過ごしたいという現実的な選択だ。

  • 「55歳で役職定年。給料は3割減ったのに仕事量は変わらない。バカバカしい」
  • 「30代の後輩が上司になった。指示される側になって、プライドもズタズタ」
  • 「定年まであと少し。今更無理して体を壊したら、退職金も年金ももらえない」

30代・40代:板挟みの苦悩と新たな選択

30代(43.8%)と40代(44.3%)は、上下の世代に挟まれて苦悩している。マネジメント層として期待される一方、見合った報酬や権限は与えられない。この世代の「静かな退職」は、組織への静かな抗議でもある。

興味深いのは、この世代から「静かな退職」を経て、新しいキャリアを築く人が出始めていることだ。「会社では最低限の仕事をして、空いた時間で資格を取得。今は独立して、前職の3倍稼いでいる」(42歳・元大手企業管理職)

企業側の意外な反応:4割が「容認」でも本音は…

驚くべきことに、企業の人事担当者の約4割が「静かな退職」を容認している。「全員が昇進を目指す必要はない」「多様な働き方の一つ」という理解が広がりつつある。

ただし、これは建前の話。ある上場企業の経営者は本音をこう明かす。「正直、困っている。やる気のある2割の社員に、8割の仕事が集中している。優秀な人材ほど疲弊して辞めていく悪循環だ」

特にリモートワーク環境では、「静かな退職者」の割合が5割を超えるという調査結果もある。「在宅勤務だと、誰が本当に働いているのか分からない。成果さえ出していれば文句は言えないが…」(IT企業人事部長)

「静かな退職」がもたらす3つの深刻な影響

1. 生産性の低下とイノベーションの枯渇

必要最低限の仕事しかしない社員が4割を超えれば、組織全体の生産性は確実に低下する。さらに深刻なのは、新しいアイデアや改善提案が出なくなることだ。

「会議で発言するのは、いつも同じメンバー。8割の人は、ただ座っているだけ」(36歳・大手メーカー勤務)

2. 優秀な人材への負担集中と離職の連鎖

「静かな退職者」がやらない仕事は、誰かがカバーしなければならない。結果として、意欲的な社員に負担が集中し、彼らまでもが燃え尽きてしまう。

実際、ある調査では「周囲の静かな退職者の影響で、自分も静かな退職を検討している」と答えた人が32%に上った。負の連鎖が組織を蝕んでいる。

3. スキル継承の断絶

見過ごされがちだが、最も深刻なのがスキル継承の問題だ。「静かな退職」をしている上司は、部下を積極的に育てない。結果として、組織の技術やノウハウが次世代に引き継がれない。

「ベテランの先輩に質問しても、『マニュアル見て』の一言。昔は飲みに連れて行ってくれて、仕事のコツを教えてくれたらしいが…」(26歳・製造業勤務)

7割が「続けたい」ーーもはや後戻りできない現実

調査で最も衝撃的だったのは、「静かな退職」実践者の70.4%が「今後も続けたい」と回答したことだ。

  • キャリア全体を通じて続けたい:29.7%
  • できるだけ続けたい:22.7%
  • どちらかといえば続けたい:18.0%

つまり、これは一時的な現象ではなく、日本の働き方の「新常識」として定着しつつある。しかも、57.4%が「静かな退職で何かを得た」と回答。最も多かったのは「自分の時間が増えた」(23.0%)だった。

企業が今すぐ取るべき5つの対策

1. 透明性の高い評価制度の構築

何をすれば評価されるのか、明確な基準を示す必要がある。特に「頑張り」ではなく「成果」を正当に評価する仕組みが不可欠だ。

2. 適切な報酬設計と副業解禁

努力が報酬に反映される仕組みが不可欠。それが難しいなら、せめて副業を解禁し、社員が自力で収入を増やせる環境を整えるべきだ。

3. 多様なキャリアパスの提供

昇進だけでなく、専門性を高める道や、ワークライフバランスを重視する道など、多様な選択肢を用意する。全員が部長を目指す時代は終わった。

4. AIツール活用による生産性向上の還元

AIで効率化した分を、給与や休暇として社員に還元する。「効率化したら早く帰れる」環境を作ることで、静かな退職を防げる。

5. 心理的安全性の確保

「頑張っても無駄」という諦めの文化を変えるには、失敗を恐れずチャレンジできる環境が必要。小さな成功体験の積み重ねが、組織を活性化させる。

「静かな退職」から「静かな革命」へ

「静かな退職」を単なる「やる気のなさ」と捉えるのは間違いだ。これは、理不尽な労働環境に対する、労働者の静かな、しかし断固とした抵抗運動なのかもしれない。

興味深いことに、「静かな退職」実践者の中から、新しい働き方のロールモデルが生まれている。会社では最低限の仕事をこなしながら、副業で本領を発揮。やがて独立して成功する人も少なくない。

「会社に期待しない分、自分の人生に責任を持つようになった。結果的に、会社員時代より充実している」(38歳・フリーランスコンサルタント)

まとめ:新しい労使関係の構築を

正社員の44.5%が「静かな退職」を実践する現実。これは、日本の雇用システムが限界に達していることの証左だ。

企業は、この現実から目を背けることなく、真摯に向き合う必要がある。全員に120%の頑張りを求める時代は終わった。むしろ、80%の力で持続可能に働ける環境を整え、残りの20%は個人の自己実現に使ってもらう。そんな新しい労使関係が求められている。

一方で働く側も、「静かな退職」で得た時間を、本当に有意義に使えているか自問する必要がある。ただ楽をするのではなく、自己投資や新しいスキル習得に充てることで、キャリアの可能性は広がる。

「静かな退職」は、日本の働き方に突きつけられた最後通牒だ。この現象を、新しい時代にふさわしい労使関係を築くきっかけにできるか。それが、これからの日本企業の命運を左右することになるだろう。

あなたは、どう働きますか?

投稿者 hana

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