三上悠亜ドレス炎上で崩れた結婚の純潔神話
あなたならどうする?もし、結婚式で着る予定のウェディングドレスを、元AV女優が仕事で着用していたと知ったら――。
2025年7月28日、この問いが日本中を二分する大論争に発展している。元セクシー女優でタレントの三上悠亜(31)が着用したウェディングドレスを巡る一般女性の投稿が、図らずも日本社会の「結婚の純潔神話」と職業差別の実態を白日の下にさらした。4600万回以上の表示、10万件を超える「いいね」。この数字が物語るのは、私たちの社会に潜む本音と建前の深い溝だ。
発端となった「最悪」投稿の衝撃
事の発端は7月27日にさかのぼる。三上悠亜がボートレースのイベントに出演した際、某ブライダルフォトスタジオのウェディングドレスを着用してInstagramに写真を投稿。これ自体は通常の仕事の一環だったが、翌日になって思わぬ波紋が広がることになる。
一般のX(旧Twitter)ユーザーが、「前撮りで着る予定だったウェディングドレスが、AV女優がイベントで着ていたことを知った。最悪。AV女優に貸すような店だと知っていたら契約しなかった」という趣旨の投稿をしたのだ。
この投稿は瞬く間に拡散され、28日午後の時点で4600万回以上の表示回数を記録。さらに驚くべきことに、この差別的とも取れる投稿に対して10万件を超える「いいね」が付けられたのである。
真っ二つに割れた世論
擁護派の主張
投稿者を擁護する声の中には、以下のような意見が見られた:
- 「結婚式は人生の一大イベント。純潔なイメージを大切にしたい気持ちは理解できる」
- 「ウェディングドレスには特別な意味がある。誰が着たかを気にするのは自然な感情」
- 「個人の価値観の問題。嫌だと感じる人の気持ちも尊重されるべき」
- 「ブライダル業界は顧客の夢を売る商売。イメージ管理は重要」
批判派の反論
一方で、この投稿を職業差別だと批判する声も多数上がった:
- 「どんな職業であれ、人権は平等。職業で人を差別するのは許されない」
- 「三上悠亜は合法的な仕事をしているだけ。偏見に満ちた発言だ」
- 「ドレスは洗浄・メンテナンスされている。誰が着たかなど関係ない」
- 「こういう差別意識こそが日本社会の問題」
著名人たちの反応
この騒動に対し、各界の著名人からも様々な意見が寄せられた。
倉田真由美氏(53)の激怒
漫画家の倉田真由美氏は、自身のXで「下劣すぎる」と投稿者を強く批判。「10万人以上がこの差別的な投稿に賛同していることに吐き気がする」と、日本社会の差別意識に対する憤りを露わにした。
倉田氏は続けて、「職業差別をしたとしても、それを堂々とSNSで発信する神経が理解できない。三上悠亜さんは立派に仕事をしているだけ。彼女を『穢れ』のように扱うのは重大な人権侵害だ」と述べた。
川上奈々美氏(32)の共感
同じく元セクシー女優で現在は女優として活動する川上奈々美氏は、「AV女優も人間です。そんな風に言われたり、扱われたりしたら悲しい」とコメント。当事者としての痛みを訴えた。
川上氏は「私たちも税金を払い、社会に貢献している一市民。過去の職業で差別されるのは本当に辛い」と、元AV女優が直面する社会的偏見の実態を明かした。
ブライダル業界の本音と建前
今回の騒動は、ブライダル業界にも波紋を広げている。ある大手ブライダルサロンの関係者は匿名を条件に、業界の複雑な事情を明かした。
「正直なところ、顧客の中にはドレスの『前歴』を気にする方もいらっしゃいます。特に高額なドレスをレンタルされる富裕層の方々は、誰が着用したかを詳しく聞かれることもあります。ただし、それを理由に特定の職業の方への貸し出しを拒否することは、明確な差別行為になります」
別のブライダル関係者は、「ドレスは全て専門的なクリーニングとメンテナンスを行っている。衛生面での問題は一切ない」と強調。その上で、「感情的な問題と衛生的な問題を混同してはいけない」と指摘した。
日本と欧米の意識の差
今回の騒動で浮き彫りになったのは、性産業に対する日本と欧米の意識の差だ。
欧米の事例
アメリカでは、元ポルノ女優のサーシャ・グレイが主流映画に出演し、高い評価を得ている。フランスでは元ポルノ女優が政治家として活動する例もある。これらの国々では、過去の職業による差別は法的にも社会的にも許されない風潮が強い。
日本の現状
一方、日本では依然として性産業に対する偏見が根強い。元AV女優が一般的な職業に転職する際の困難さ、結婚や子育てにおける社会的圧力など、「元」という肩書きが一生ついて回る現実がある。
社会学者の上野千鶴子氏は過去に、「日本社会は性に対して二重基準を持っている。需要があるから供給があるのに、供給側だけを差別するのは矛盾している」と指摘している。
「穢れ」思想と現代社会
今回の騒動の根底には、日本特有の「穢れ」思想があるとの指摘もある。宗教学者の島薗進氏は、「日本には古来より『穢れ』と『清め』の概念がある。特に結婚という通過儀礼においては、この意識が強く表れる」と分析する。
しかし、現代社会においてこうした価値観を無批判に受け入れることの危険性も指摘されている。「職業による『穢れ』という考え方は、部落差別にもつながる危険な思想。21世紀の今、こうした差別意識は克服されるべき」(人権問題研究者)
SNS時代の差別の可視化
今回の騒動が4600万回以上も表示されたことは、SNSが差別意識を可視化する装置として機能していることを示している。
潜在的差別意識の表出
普段は表に出さない本音が、匿名性の高いSNSでは噴出しやすい。今回の投稿に10万件以上の「いいね」がついたことは、同様の差別意識を持つ人が相当数存在することを示唆している。
議論の場としての可能性
一方で、この騒動が大きな議論を呼んだことで、職業差別について考える機会が生まれたとも言える。様々な立場の人々が意見を交わすことで、社会の意識が少しずつ変化していく可能性もある。
三上悠亜本人の反応は?
騒動の中心となった三上悠亜本人は、28日夕方の時点でこの件について公式なコメントを出していない。関係者によると、「仕事として着用しただけなのに、ここまで大きな騒動になるとは思っていなかった」と困惑しているという。
三上悠亜は2023年にAV女優を引退し、現在はタレント、YouTuber、実業家として多方面で活躍している。引退後も根強いファンに支えられ、Instagram フォロワーは300万人を超える人気者だ。
レンタルドレス業界への影響
今回の騒動は、レンタルドレス業界にも影響を与える可能性がある。
顧客からの問い合わせ増加
複数のドレスショップによると、騒動以降「誰が着用したか教えてほしい」という問い合わせが増加しているという。ある店舗オーナーは、「個人情報保護の観点から、着用者の詳細は一切お答えできない」と対応に苦慮している様子を見せた。
業界ガイドラインの必要性
日本ブライダル文化振興協会は、「今回の件を受けて、業界として差別を許さない明確なガイドラインを策定する必要がある」との声明を発表。職業による貸し出し拒否は許されないことを改めて確認する方針だ。
法的観点から見た問題点
弁護士の立場から、今回の騒動を分析する声もある。
名誉毀損の可能性
ある弁護士は、「特定の個人を名指しして『最悪』などと表現することは、名誉毀損に当たる可能性がある」と指摘。SNSでの発言であっても、法的責任を問われる可能性があることを警告した。
職業差別と憲法
憲法学者からは、「職業選択の自由は憲法で保障された基本的人権。特定の職業を理由に差別することは、憲法の理念に反する」との意見も出ている。
今後の展望と課題
今回の騒動は、日本社会が抱える根深い問題を浮き彫りにした。
必要な意識改革
- 職業に貴賎なしという基本的人権意識の徹底
- 性産業に対する偏見の解消
- 多様性を認める社会の実現
- SNSリテラシーの向上
期待される変化
若い世代を中心に、職業差別に対する問題意識は高まっている。今回の騒動をきっかけに、より包摂的な社会に向けた議論が活発化することが期待される。
まとめ:問われる日本社会の成熟度
三上悠亜のウェディングドレス着用を巡る騒動は、単なるSNS上の炎上事件では済まされない重要な問題を提起している。それは、21世紀の日本社会が、真の意味での多様性と包摂性を実現できているかという根本的な問いかけだ。
「AV女優が着たドレスは嫌」という一個人の感情は、確かに否定できない。しかし、その感情を公の場で表明し、特定の職業に従事する人々を排除しようとする行為は、明確な差別である。
私たちに求められているのは、自分の中にある偏見や差別意識と向き合い、それを克服していく勇気だ。三上悠亜も、投稿した女性も、同じ社会で生きる一人の人間である。互いの尊厳を認め合える社会こそが、真に成熟した社会と言えるのではないだろうか。
この騒動が、日本社会の意識を一歩前進させるきっかけになることを願ってやまない。