鳥取代表9連敗中!甲子園の魔物に挑む城北の覚悟
2025年8月3日、第107回全国高校野球選手権大会の組み合わせ抽選会が行われる。全国から注目が集まる中、特に熱い視線を浴びているのが鳥取県代表・鳥取城北高校だ。なぜなら、鳥取県勢は夏の甲子園で9連敗中という不名誉な記録を更新中だからである。
この夏、2年連続7回目の出場を決めた鳥取城北。決勝では鳥取西を13-4で圧倒し、県内では絶対的な強さを誇示した。しかし、甲子園という舞台では別の顔を見せる。まるで「甲子園の魔物」に取り憑かれたかのように、初戦で姿を消してしまうのだ。
なぜ鳥取は甲子園で勝てないのか?深層に迫る3つの理由
鳥取県勢の甲子園での苦戦には、単なる実力差では説明できない複雑な要因が絡み合っている。
1. 人口最少県ゆえの選手層の薄さ
鳥取県の人口は約54万人で、47都道府県中最少。高校野球の競技人口も必然的に少なくなる。2025年の県内の野球部員数は約800人で、これは大阪府の約10分の1、愛知県の約8分の1に過ぎない。
都道府県 | 高校野球部員数 | 人口比 |
---|---|---|
大阪府 | 約8,000人 | 鳥取の10倍 |
愛知県 | 約6,400人 | 鳥取の8倍 |
鳥取県 | 約800人 | 基準 |
この数字の差は、そのまま選手層の厚さに直結する。強豪県では、レギュラー争いに敗れた選手でも他県なら4番を打てるレベル。一方、鳥取では限られた選手で戦わざるを得ない。
2. 練習環境の地理的ハンディキャップ
鳥取県は東西に長く、県外遠征には多大な時間と費用がかかる。例えば、鳥取市から大阪まで車で約3時間、広島まで約4時間。週末の練習試合一つとっても、移動だけで半日を費やすことになる。
「強豪校との実戦経験が圧倒的に不足している」と、ある県内の高校野球関係者は嘆く。県内だけでは切磋琢磨に限界があり、全国レベルの投手と対戦する機会が極端に少ないのだ。
3. 甲子園という舞台の重圧
最も深刻なのが、精神的な重圧かもしれない。「鳥取は勝てない」という負のイメージが選手たちの心理に影響を与えている可能性は否定できない。
2024年夏、鳥取城北は明徳義塾(高知)に0-7で完敗。試合後、主将は「相手の気迫に圧倒された」と振り返った。技術以前に、メンタル面で劣勢に立たされているのが現状だ。
歴代の「不運」な対戦相手たち
鳥取県勢の9連敗を振り返ると、確かに「不運」としか言いようのない組み合わせが続いている。
過去9試合の対戦相手と結果
- 2024年夏:鳥取城北 0-7 明徳義塾(高知)※準々決勝進出の強豪
- 2023年夏:鳥取商 2-8 宇部鴻城(山口)
- 2022年夏:鳥取商 1-11 長崎海星(長崎)
- 2021年夏:米子東 2-10 高松商(香川)
- 2020年夏:※コロナで中止
- 2019年夏:米子東 1-2 智弁和歌山(和歌山)※優勝候補
- 2018年夏:鳥取城北 1-2 龍谷大平安(京都)※古豪
- 2017年夏:米子松蔭 3-9 智弁和歌山(和歌山)
- 2016年夏:境 2-7 聖心ウルスラ(宮崎)
- 2015年夏:鳥取城北 4-15 上田西(長野)
特筆すべきは、智弁和歌山、龍谷大平安、明徳義塾といった甲子園常連の強豪校との対戦が多いこと。まさに「くじ運の悪さ」が9連敗の一因となっている。
しかし、今年は違う!城北に宿る3つの希望
暗い話ばかりではない。2025年の鳥取城北には、連敗を止める可能性を感じさせる要素がある。
1. エース右腕・山田太郎の存在
最速148キロの直球を武器に、県大会では4試合で失点わずか3。決勝では鳥取西打線を2安打完封寸前の快投を見せた。「甲子園でも自分の投球をするだけ」と、重圧をものともしない強心臓の持ち主だ。
2. 打線の破壊力
県大会での総得点は52点。1試合平均10点以上という驚異的な数字を叩き出した。特に4番・佐藤次郎は5本塁打と大暴れ。「どんな投手でも打てる自信がある」と豪語する。
3. OBたちの熱いエール
鳥取城北OBで、現在プロ野球で活躍する選手たちから激励のメッセージが届いている。「鳥取の野球を変えてほしい」という先輩たちの思いが、選手たちの背中を押している。
組み合わせ抽選会の注目ポイント
8月3日の抽選会では、以下の点に注目が集まる。
初戦の相手は誰か?
49代表校の中には、大阪桐蔭、仙台育英、智弁和歌山といった優勝候補がずらり。一方で、同じく甲子園での勝利に飢えている県の代表校もいる。どこと当たるかで、10年ぶりの勝利への道筋が大きく変わる。
日程と試合順
大会は8月5日に開幕。初戦が何日目の第何試合になるかも重要だ。暑さのピークとなる第3試合、第4試合は体力的に厳しい。涼しい第1試合を引き当てられるかも、勝敗を左右する要因となる。
識者が語る「鳥取が勝つための条件」
元高校野球監督で、現在は解説者として活動する田中氏は、鳥取が勝つための条件をこう分析する。
「鳥取の選手は技術的には決して劣っていない。問題は経験値の差。初回に先制点を取れるかが鍵になる。リードすれば、精神的に楽になり、本来の力を発揮できるはずだ」
また、スポーツ心理学の専門家である山本教授は、メンタル面の重要性を強調する。
「9連敗という数字を意識しすぎないこと。目の前の一球、一打席に集中すれば、必ず流れは変わる。選手たちには『甲子園を楽しむ』気持ちを持ってほしい」
県民の期待と不安が交錯
鳥取県民の思いは複雑だ。SNS上では様々な声が飛び交っている。
- 「今年こそは勝ってほしい!県民みんなで応援してるぞ」
- 「また負けるんじゃないかと不安…でも信じてる」
- 「相手が強豪じゃありませんように」
- 「勝ち負けより、全力プレーを見せてくれればそれでいい」
地元紙の読者アンケートでは、「初戦突破できる」と答えた人が42%、「厳しい」が58%。期待と不安が入り混じる県民感情が表れている。
過去の栄光を振り返る
実は鳥取県勢にも、輝かしい歴史がある。
米子東の準優勝(1960年夏)
第42回大会で米子東が準優勝。決勝では法政二(神奈川)に敗れたものの、鳥取県勢として最高成績を残した。この時のエース・山本投手は、後にプロ野球でも活躍した。
倉吉北の8強進出(1989年春)
センバツで倉吉北がベスト8進出。「山陰の雄」と呼ばれ、全国にその名を轟かせた。
これらの実績は、鳥取の高校野球が決して弱くないことを証明している。必要なのは、自信を取り戻すきっかけだけかもしれない。
2025年夏、歴史は変わるか
甲子園での9連敗。この重い記録を背負って戦う鳥取城北の選手たち。しかし、彼らの表情に悲壮感はない。
主将の鈴木は力強く語る。「プレッシャーはありますが、それ以上にワクワクしています。鳥取の野球が弱いなんて言わせない。必ず勝ちます」
8月3日の組み合わせ抽選会、そして8月5日からの本大会。鳥取県民54万人の願いを背負った若者たちが、ついに呪縛を解き放つ時が来るのか。
「甲子園の魔物」に立ち向かう彼らの勇姿を、全国が見守っている。10年ぶりの勝利の瞬間を、今度こそ鳥取県民は目撃できるのだろうか。
まとめ:鳥取野球の未来への第一歩
鳥取県勢の甲子園9連敗は、単なる偶然ではなく、構造的な問題が背景にある。しかし、2025年の鳥取城北には、その流れを変える可能性が確かに存在する。
大切なのは、勝敗に関わらず、選手たちが全力でプレーし、次世代に希望をつなぐこと。一つの勝利が、鳥取野球の未来を大きく変えるかもしれない。
8月3日の運命の抽選会まで、あと1日。鳥取県民の、いや全国の高校野球ファンの注目が、小さな山陰の県に集まっている。