法改正で注目!最新熱中症対策ウェアラブル10選
2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行され、事業者に熱中症対策が義務付けられました。この法改正により、建設現場や工場、農業、配送業など、暑熱環境下で働く全ての労働者の安全確保が法的に求められるようになり、熱中症対策ウェアラブルデバイスへの注目が急速に高まっています。
今回は、2025年7月現在、市場で最も注目されている熱中症対策ウェアラブルデバイス10選を、実際の使用データと専門家の評価を基に徹底比較します。価格、機能、実用性、そして現場での評判まで、導入を検討している企業や個人の方に向けて詳しく解説していきます。
なぜ今、熱中症対策ウェアラブルが必要なのか
法改正の背景と企業の責任
厚生労働省の統計によると、2024年の職場における熱中症による死傷者数は829人、そのうち死亡者数は28人に上りました。特に建設業が全体の約40%を占め、次いで製造業が約20%となっています。こうした深刻な状況を受け、政府は労働安全衛生規則を改正し、以下の対策を義務化しました。
義務化された項目 | 具体的な内容 | 違反時の罰則 |
---|---|---|
熱中症リスク評価 | WBGT値の測定と記録 | 50万円以下の罰金 |
予防措置の実施 | 休憩場所の確保、水分・塩分の提供 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
労働者の健康状態把握 | 体調不良者の早期発見システム構築 | 50万円以下の罰金 |
教育・訓練の実施 | 年1回以上の熱中症予防教育 | 50万円以下の罰金 |
従来の対策の限界
これまでの熱中症対策は、定期的な休憩、水分補給の呼びかけ、冷房設備の設置などが中心でした。しかし、これらの対策には以下のような限界がありました。
- 個人差への対応不足:同じ環境でも、年齢、体力、その日の体調により熱中症リスクは大きく異なる
- リアルタイム性の欠如:症状が現れてからでは対応が遅い
- 客観的データの不足:「大丈夫」という本人の主観に頼りがち
- 管理者の負担増大:多数の作業員を個別に管理することは困難
ウェアラブルデバイスは、これらの課題を技術的に解決し、より効果的な熱中症対策を可能にします。
2025年最新!熱中症対策ウェアラブルデバイス10選
ここからは、2025年7月現在、最も注目されている熱中症対策ウェアラブルデバイスを詳しく紹介します。各製品の特徴、価格、実際の使用者の声を交えながら、それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
1. カナリアPlus®(Biodata Bank株式会社)
価格:本体 49,800円(税込)+ 月額利用料 1,980円/台
特徴:
- 深部体温を高精度で推定(医療機器相当の精度)
- 5ヶ月間充電不要の長期稼働
- 深部体温38℃前後で自動アラート(LED、振動、音)
- 累計1万人以上のバイタルデータを基にしたAIアルゴリズム
- IP67防水防塵仕様
導入事例:
大手建設会社A社では、2025年6月から全現場作業員500名に導入。導入後1ヶ月で熱中症による作業中断が前年同期比で75%減少。作業員からは「振動アラートが分かりやすく、自分では気づかない体調変化を教えてくれる」と好評。
メリット:
- 医療レベルの精度で深部体温を推定
- 充電の手間が少ない
- アラートが多段階で確実
デメリット:
- 初期費用が高め
- 月額利用料が発生
2. みまもりがじゅ丸®(NTTPCコミュニケーションズ)
価格:初期費用 30,000円/台 + 月額利用料 2,500円/台
特徴:
- リストバンド型で脈拍と位置情報をリアルタイム監視
- SOSボタン搭載
- 転倒検知機能
- 管理画面で複数人を一括監視可能
- 4G LTE通信対応
導入事例:
物流会社B社の配送センターで導入。倉庫内作業員150名の健康状態を事務所から一括管理。2025年7月の猛暑日に、3名の体調不良を事前に検知し、適切な休憩指示により熱中症を防いだ。
メリット:
- 位置情報により迅速な救助が可能
- 管理者の負担軽減
- 転倒など他の事故にも対応
デメリット:
- 通信料が別途必要
- 屋内では位置精度が低下
3. eMETシステム(株式会社ウェザーニューズ)
価格:ヘルメットセンサー 25,000円 + クラウドサービス料 月額1,500円/台
特徴:
- ヘルメット装着型で作業の邪魔にならない
- 外気温とひたい温度を同時測定
- 独自の熱ストレス指数を算出
- 天気予報と連動した予測機能
- スマートフォンアプリで個人管理も可能
導入事例:
道路工事会社C社では、炎天下での作業が多い夏場に全作業員に配布。「ヘルメットに付けるだけなので、違和感なく使える」と現場から高評価。熱中症リスクの可視化により、作業計画の最適化も実現。
メリット:
- 既存の保護具に追加するだけ
- 天気予報との連動で事前対策が可能
- 比較的安価
デメリット:
- ヘルメット着用が必須の現場のみ
- 深部体温の推定精度は劣る
4. バイタルモニター®(日立製作所)
価格:本体 88,000円 + 年間サポート料 24,000円
特徴:
- 名刺サイズの小型デバイス
- 24時間連続で11種類のバイタルデータを測定
- 機械学習による個人別リスク予測
- 疲労度も同時に評価
- 医療機関との連携オプションあり
導入事例:
製造業D社の工場で、高温環境下で働く従業員200名に導入。個人の平常値を学習し、わずかな変化も検知。疲労による事故も30%減少し、生産性向上にも貢献。
メリット:
- 総合的な健康管理が可能
- 高精度なリスク予測
- 疲労管理にも活用可能
デメリット:
- 高額な初期投資
- 操作が複雑
5. WORK MATE(アシックス)
価格:ウェアセット 35,000円 + アプリ利用料 月額500円/人
特徴:
- スポーツウェアメーカーの技術を活用
- 衣服内温度・湿度センサー内蔵
- 快適性を重視した設計
- 洗濯可能(センサー部は取り外し式)
- スマートフォンで簡単管理
導入事例:
農業法人E社で、炎天下での農作業に従事する50名が使用。「普通の作業着と変わらない着心地で、センサーの存在を忘れるほど」と好評。洗濯できるため衛生的で、継続使用率95%を達成。
メリット:
- 着心地が良い
- 洗濯可能で衛生的
- スポーツ科学に基づいた設計
デメリット:
- ウェア一体型のため複数枚必要
- センサー精度は専用機に劣る
6. SmartFit(オムロン ヘルスケア)
価格:腕時計型デバイス 42,000円 + クラウドサービス 月額1,200円/台
特徴:
- 医療機器メーカーの技術力
- 血圧・脈拍・体温を高精度測定
- 睡眠の質も評価し総合的な体調管理
- 1週間のバッテリー持続
- 防水仕様(IP68)
導入事例:
運送会社F社のドライバー300名に配布。長時間運転による疲労と暑さの複合的なリスクを管理。休憩タイミングの最適化により、事故率が40%減少。
メリット:
- 医療グレードの測定精度
- 24時間の健康管理
- スマートウォッチとしても使用可能
デメリット:
- 価格が高め
- 定期的な充電が必要
7. 熱中対策ウォッチ(カスタム)
価格:8,800円(買い切り・アプリ不要)
特徴:
- 低価格で導入しやすい
- 熱中症指数(WBGT)を自動計算
- 5段階のLED表示
- アラーム機能
- 電池式で約6ヶ月使用可能
導入事例:
中小建設会社G社が試験導入。「高額なシステムは導入できないが、これなら全員に配れる」と経営者。基本的な機能に絞ることで、現場での使いやすさを実現。
メリット:
- 圧倒的に安価
- シンプルで使いやすい
- ランニングコスト不要
デメリット:
- 個人差を考慮しない
- データ管理機能なし
8. TSND151(タニタ)
価格:15,000円 + 専用アプリ 月額800円
特徴:
- 黒球温度センサー搭載
- 日射・輻射熱を正確に測定
- アラームの音量調整可能
- Bluetooth連携
- 作業記録の自動化
導入事例:
屋外イベント会社H社で、スタッフと来場者の安全管理に活用。「日向と日陰の温度差がリアルタイムで分かり、適切な配置換えができる」と現場責任者。
メリット:
- 環境測定に特化した高精度
- コストパフォーマンスが良い
- グループ管理が容易
デメリット:
- 個人の体調は測定できない
- 環境測定器の域を出ない
9. Core(greenTEG AG)
価格:38,000円(並行輸入品)
特徴:
- スイス製の高精度センサー
- 深部体温を±0.2℃の精度で測定
- 胸部装着型
- プロスポーツ選手も使用
- 最大7日間連続使用可能
導入事例:
消防署I所で、訓練時の隊員の体調管理に導入。「過酷な訓練でも正確にデータが取れる」と高評価。熱中症予防だけでなく、訓練効果の最適化にも活用。
メリット:
- 世界最高レベルの測定精度
- 過酷な環境でも安定動作
- 研究データが豊富
デメリット:
10. 安全モニタリングシステム(富士通)
価格:要見積もり(50名以上の導入で1人あたり月額3,000円程度)
特徴:
- 総合的な安全管理プラットフォーム
- 各種ウェアラブルデバイスと連携可能
- AIによる異常検知と予測
- 労働安全衛生法対応の帳票自動作成
- 24時間365日のサポート体制
導入事例:
大手ゼネコンJ社が全国の現場で導入。1万人規模の作業員データを一元管理し、熱中症ゼロを3年連続達成。法令遵守の証明も容易になり、発注者からの信頼も向上。
メリット:
- 大規模運用に最適
- 法令遵守を完全サポート
- 他の安全管理とも統合可能
デメリット:
- 小規模事業者には過剰投資
- 導入に時間がかかる
導入を成功させるための5つのポイント
ウェアラブルデバイスを導入しても、適切に運用されなければ効果は期待できません。成功事例を分析すると、以下の5つのポイントが重要であることが分かりました。
1. 現場の声を聞く
導入前に必ず現場作業員の意見を聞きましょう。「装着が面倒」「アラームがうるさい」といった不満は、使用率低下に直結します。可能であれば、複数機種の試用期間を設けることをお勧めします。
2. 段階的な導入
いきなり全員に導入するのではなく、まずは熱中症リスクの高い部署や、理解のある従業員から始めましょう。成功体験を共有することで、全社的な導入がスムーズになります。
3. 教育の徹底
デバイスの使い方だけでなく、なぜ必要なのか、どんなメリットがあるのかを丁寧に説明しましょう。「会社に監視される」という誤解を解くことが重要です。
4. データの活用
収集したデータを作業計画の改善に活用しましょう。例えば、特定の時間帯や作業でリスクが高いことが分かれば、シフト調整や作業方法の見直しが可能です。
5. 継続的な改善
導入後も定期的に効果を検証し、必要に応じて運用方法を改善しましょう。季節による使用感の違いや、新しい課題にも柔軟に対応することが大切です。
費用対効果を最大化する選び方
最適なデバイスは、業種、規模、予算によって異なります。以下の表を参考に、自社に合った製品を選びましょう。
事業規模 | 推奨デバイス | 月額コスト目安(1人あたり) | 選定理由 |
---|---|---|---|
個人・小規模(〜10名) | 熱中対策ウォッチ | 0円(買い切り) | 初期投資を抑えられる |
中規模(10〜50名) | TSND151、eMETシステム | 800〜1,500円 | コストと機能のバランスが良い |
大規模(50名〜) | みまもりがじゅ丸、富士通システム | 2,500〜3,000円 | 一元管理で効率化 |
高リスク作業 | カナリアPlus、Core | 2,000円〜 | 高精度な体温測定が必須 |
2025年後半の注目トレンド
熱中症対策ウェアラブルの技術は日々進化しています。2025年後半に向けて、以下のようなトレンドが予想されます。
1. AI予測精度の向上
機械学習の進化により、個人の体調パターンをより正確に学習し、熱中症リスクを数時間前に予測できるようになります。「明日の作業は要注意」といった事前アラートが可能に。
2. 非接触型センサーの実用化
カメラやレーダーを使った非接触型の体温測定技術が実用化され、ウェアラブルデバイスを装着できない作業でも健康管理が可能になります。
3. 5G活用によるリアルタイム医療連携
5Gネットワークの普及により、異常検知時に産業医や医療機関とリアルタイムで連携できるシステムが登場します。遠隔地でも迅速な医療判断が可能に。
4. サブスクリプション型の普及
初期投資を抑えたい中小企業向けに、デバイスレンタルを含む完全サブスクリプション型のサービスが増加。月額5,000円程度で全てをカバーするプランも登場予定。
5. 保険連動型サービス
ウェアラブルデバイスの使用データと連動し、労災保険料が割引になるサービスが検討されています。安全対策が直接的な経済メリットにつながる時代へ。
まとめ:命を守る投資として
2025年6月の法改正により、熱中症対策は「努力目標」から「法的義務」へと変わりました。しかし、これを単なるコンプライアンス対応と考えるのではなく、従業員の命と健康を守る重要な投資として捉えることが大切です。
ウェアラブルデバイスの導入は、確かに初期投資やランニングコストが発生します。しかし、熱中症による労働災害を1件でも防げれば、その投資は十分に回収できます。何より、従業員が安心して働ける環境を作ることは、企業の持続的な成長にもつながります。
本記事で紹介した10製品は、それぞれに特徴があり、完璧な製品はありません。重要なのは、自社の状況に合った製品を選び、適切に運用することです。まずは小規模な試験導入から始め、効果を確認しながら段階的に拡大していくことをお勧めします。
気候変動により、今後も猛暑日は増加すると予想されます。今こそ、最新技術を活用した熱中症対策に真剣に取り組む時です。本記事が、皆様の職場の安全性向上に少しでも貢献できれば幸いです。
安全で快適な労働環境の実現に向けて、一歩ずつ前進していきましょう。