たつき諒「予言は外れて当然」7月5日の真実と経済損失の裏側

2025年7月5日、日本中が固唾を呑んで見守った「運命の日」が過ぎ去った。漫画家・たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』で予言された大災害は発生せず、日本列島は平穏な一日を迎えた。しかし、この予言騒動が残した爪痕は想像以上に深く、著者本人の心境や社会への影響、そして莫大な経済損失について、新たな事実が明らかになってきている。

予言が外れた翌日、著者が語った衝撃の本音

7月6日早朝、たつき諒氏は自身のSNSで初めて心境を吐露した。「正直、ホッとしている」という率直な言葉から始まった投稿は、多くの人々に衝撃を与えた。

「私は漫画家であり、予言者ではありません。あの本の帯に書かれた『2025年7月に本当の大災難がやってくる』という文言は、編集者が付けたものです。私自身、この騒動には戸惑いと苦痛を感じていました」

さらに驚くべきことに、たつき氏は6月15日に出版した新刊『天使の遺言』で、すでに予言の日付について訂正を行っていたのだ。「7月5日は夢を見た日であり、災害が起きる日ではない」と明確に述べていたにもかかわらず、その情報は広く知られることなく、社会は予言の日を迎えることとなった。

予言騒動がもたらした莫大な経済損失

この予言騒動による経済的影響は、当初の予想をはるかに超える規模となった。経済産業省の試算によると、観光業界だけでも約1,200億円の損失が発生したという。

観光業界への深刻な打撃

特に深刻だったのは、香港からの観光客の激減だ。香港の有名風水師が日本での大地震を予言したことも重なり、香港発の日本行き航空便は7月の予約率が前年比で73%も減少した。キャセイパシフィック航空は、7月の日本路線を週168便から週98便に削減せざるを得なくなった。

防災グッズ特需と在庫問題

一方で、防災関連業界は空前の特需に沸いた。しかし、これも手放しでは喜べない状況となっている。

• 非常用持出袋の売上：前年同期比680%増
• 保存水・保存食の売上：前年同期比520%増
• 災害用ラジオの売上：前年同期比450%増

問題は、7月5日を過ぎた途端に需要が急激に冷え込んだことだ。多くの小売店では過剰在庫を抱え、「予言特需」の反動に苦しんでいる。ある防災用品メーカーの担当者は「通常の10倍以上の在庫を抱えてしまった。処分に数年はかかるだろう」と頭を抱える。

SNSが生んだ集団心理の恐怖

今回の騒動で最も注目すべきは、SNSによる情報拡散の速さと、それが生み出す集団心理の恐ろしさだ。

驚異的な拡散スピード

データ分析会社の調査によると、6月24日から30日までのわずか1週間で、「7月5日予言」に関する投稿は以下のような規模に達していた：

• 投稿アカウント数：9,764アカウント
• 総投稿数：12,787ポスト
• 拡散アカウント数：21,793アカウント
• 総拡散回数：28,468回

さらに恐ろしいのは、情報が拡散される過程で内容が歪曲・誇張されていったことだ。当初は「大災害の可能性」だった話が、いつの間にか「確実に起こる大地震」「東京壊滅」「富士山噴火」といった過激な内容に変化していった。

集団パニックの前兆現象

7月4日の夜から5日の早朝にかけて、各地で異常な行動が報告された：

• 羽田空港での出国ラッシュ（通常の3.2倍の混雑）
• ガソリンスタンドでの給油待ち行列（最長4時間待ち）
• コンビニやスーパーでの買い占め騒動
• SNSでのデマ情報の爆発的拡散

心理学者の分析によると、これらは典型的な「集団パニックの前兆現象」だという。人々は理性的に考えれば「予言など当たるはずがない」と分かっていても、周囲の行動に影響されて同調してしまう。この「同調圧力」こそが、今回の騒動を大きくした最大の要因だった。

「予言ビジネス」の闇と法的責任

今回の騒動で浮き彫りになったのは、「予言」や「予知」を商業利用することの問題点だ。

出版社の責任とは

『私が見た未来 完全版』の出版元である飛鳥新社は、発行部数120万部という大ヒットを記録した。しかし、その成功の裏で、著者の意図とは異なる宣伝文句を使用していたことが明らかになった。

法律専門家によると、「予言や占いは個人の思想・表現として尊重され、外れても法的責任は問われない」という。しかし、今回のケースでは以下の点が問題視されている：

1. 著者の意図と異なる内容での宣伝
2. 社会的混乱を予見できたにもかかわらず、訂正を行わなかった
3. 経済的損失を被った企業からの集団訴訟の可能性

実際、香港の旅行会社3社は「根拠のない予言により多大な損害を被った」として、出版社に対する損害賠償請求を検討していることが明らかになった。

インフルエンサーの責任

さらに問題なのは、この予言を拡散したインフルエンサーたちの存在だ。フォロワー数100万人を超える某YouTuberは、「7月5日に備えよ！」という動画を連日投稿し、再生回数は合計で2,000万回を超えた。これらの動画による広告収入は推定で3,000万円以上とされる。

弁護士の見解では、「単に予言を紹介しただけなら責任は問われないが、明らかに社会不安を煽る内容や、虚偽の情報を含んでいた場合は、威力業務妨害罪に問われる可能性がある」という。

予言が的中しなくて本当に良かったのか

興味深いことに、一部の専門家からは「予言が外れたことで、かえって問題が生じた」という指摘も出ている。

防災意識の反動的低下

防災心理学の専門家は次のように警告する：

「今回の騒動で多くの人が防災グッズを購入し、避難場所を確認した。これ自体は良いことだった。しかし、予言が外れたことで『やっぱり備えても無駄』という誤った認識が広がる恐れがある。これは非常に危険な傾向だ」

実際、SNS上では「もう二度と予言なんか信じない」「防災グッズ買って損した」といった投稿が相次いでいる。この反動が、本当に必要な防災準備の妨げになることが懸念されている。

科学的地震予知への不信感

さらに深刻なのは、今回の騒動が科学的な地震予知研究への不信感を生んでいることだ。気象庁は6月13日の会見で「現在の科学では日時・場所・規模を特定した地震予知は不可能」と明言したが、これを「気象庁も予言を否定できなかった」と曲解する人々が少なくない。

地震学者は「私たちの研究は、確率論的な地震動予測や、長期的な地震発生確率の算出を目的としている。オカルト的な予言とは全く異なる」と強調するが、一般市民との認識のギャップは広がる一方だ。

たつき諒氏のその後と新たな展開

7月5日を過ぎた今、たつき諒氏は新たな活動を始めている。

「予言ではなく警告として」

たつき氏は最新のインタビューで、自身の立場を明確にした：

「私の夢は予言ではなく、警告として受け取ってほしい。日本は地震大国であり、いつ大災害が起きてもおかしくない。今回の騒動が防災意識を高めるきっかけになったなら、それは意味があったと思う」

また、予言騒動で得た印税の一部を、防災教育基金に寄付することも表明した。金額は公表されていないが、関係者によると「かなりの額」だという。

新作は「防災啓発漫画」

さらに注目すべきは、たつき氏が新しい漫画の執筆を始めたことだ。タイトルは『明日への備え』。予知夢ではなく、実際の災害体験者の証言を基にした防災啓発漫画だという。

「もう予言はしない。代わりに、本当に役立つ防災知識を漫画で伝えたい」と語るたつき氏。皮肉にも、予言騒動を経て、より現実的で建設的な方向へと舵を切ることになった。

7月5日が残した教訓

今回の「7月5日予言騒動」から、私たちは何を学ぶべきだろうか。

1. 情報リテラシーの重要性

SNS時代において、情報の真偽を見極める能力はますます重要になっている。特に、感情に訴える内容や、恐怖を煽る情報には注意が必要だ。今回の騒動では、多くの人が「念のため」という理由で情報を拡散し、結果的に社会的混乱を招いた。

2. メディアの責任

出版社やメディアは、センセーショナルな内容で注目を集めることと、社会的責任のバランスを考える必要がある。特に、社会不安を招く可能性のある内容については、より慎重な扱いが求められる。

3. 防災意識の正しい持ち方

予言に頼るのではなく、科学的根拠に基づいた防災対策を行うことが重要だ。今回の騒動で防災グッズを購入した人は、それを無駄と考えるのではなく、良い機会だったと前向きに捉えるべきだろう。

4. 集団心理への警戒

周囲に流されず、冷静に判断することの大切さを改めて認識する必要がある。特に、SNSでの情報拡散は瞬時に行われるため、一度立ち止まって考える習慣を持つことが重要だ。

終わりに：本当の「その後」はこれから

2025年7月5日は、確かに「何も起こらなかった日」として記憶されるだろう。しかし、この日が日本社会に与えた影響は、予言が的中した場合に匹敵するほど大きかった。

経済損失、社会的混乱、そして人々の心に残った不安と不信感。これらは簡単に解消されるものではない。しかし同時に、防災意識の向上、情報リテラシーの重要性の認識、そして科学的思考の大切さを学ぶ機会にもなった。

たつき諒氏の予言は確かに外れた。しかし、この騒動が私たちに突きつけた課題は、まだ解決されていない。情報化社会における集団心理、メディアの責任、そして個人の判断力。これらの問題と向き合うことこそが、7月5日が残した本当の「宿題」なのかもしれない。

予言の日は過ぎ去った。しかし、本当の意味での「その後」は、これから始まるのだ。