興行収入98億円突破!『チェンソーマン レゼ篇』が巻き起こした旋風

2025年9月19日に公開された劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が、国内興行収入98億円を突破し、歴代興行収入ランキング51位にランクインする快進撃を続けている。公開から91日間で観客動員631万人、国内興収96.5億円を記録し、さらに世界100以上の国と地域で公開され、全世界累計興行収入は278.8億円を突破した。当初は最終興収50億円を目標としていた東宝の予想を大きく上回る大ヒットとなり、年内100億円突破も現実味を帯びている。

この記録的な成功は、アニメ業界に大きな衝撃を与えている。公開初日の段階で東宝が最終興収50億円を狙える好スタートと説明していたが、その想定を公開1ヶ月も待たずに突破する異例の展開となった。週末動員ランキングでは何度も首位に返り咲き、ロングラン上映が続いている点も特筆すべきだ。従来のアニメ映画とは異なる、新しい成功モデルを確立したと言えるだろう。

なぜ『レゼ篇』はここまでヒットしたのか?

『チェンソーマン レゼ篇』の成功には、複数の要因が絡み合っている。最大の特徴は、アニメ制作会社MAPPAによる革新的なビジネスモデルだ。通常、アニメ映画は複数の企業が出資する「製作委員会方式」が一般的だが、本作ではMAPPAが単独出資という異例の体制を採用した。制作費は6億円以上と推定されるが、MAPPA代表の大塚学氏は「どういうビジネススキームで、どういうお金を生み出せるかを予測して、それに対して制作費を設定した。これまでと全く違うやり方」と語っている。

この単独出資により、MAPPAは作品のクオリティを妥協することなく追求できた。製作委員会方式では複数の企業の意向を調整する必要があり、時には作品の方向性に制約が生まれることもある。しかし、単独出資では制作会社が全権を握るため、クリエイターの理想を最大限に反映できる。その結果、妥協のない圧倒的なクオリティが実現し、観客の心を掴んだのだ。

国内配給は東宝と組み、全国421館という大規模公開を実現。さらに、大塚氏自らが北米配給最大手のソニー・ピクチャーズと交渉し、日本公開からわずか1カ月後の北米公開を成功させた。この迅速なグローバル展開が、世界的ヒットの土台となった。通常、海外展開には数ヶ月から半年以上かかることも多いが、1カ月という短期間での実現は驚異的だ。これにより、日本での話題が冷めないうちに海外ファンにも届き、グローバルな口コミ効果が最大化された。

ストーリーの独自性が観客の心を掴んだ

『レゼ篇』が多くの観客の心を掴んだ理由は、ストーリーの独自性にある。一般的なバトル系作品では、主人公が「悪を倒す正義のヒーロー」として描かれることが多い。しかし、本作の主人公デンジは、敵であるレゼを前にしてもためらい、弱さを見せ、最終的には手放すという選択をする。この人間的な迷いと葛藤が、作品をジャンルの枠を超えた普遍的な物語へと昇華させた。

16歳のデンジが経験する初恋のときめきは、あまりにも純粋で、あまりにも致命的だ。血と炎の世界で芽生えた恋心と、その行き着く先の切なさが、観客に深い感動を与えている。SNSのリアクションを見ると、従来のコアファン層である男性だけでなく、女性層にもファンの裾野が大きく広がっていることがうかがえる。バトルシーンの迫力と恋愛要素の巧みな融合が、幅広い層に訴求した結果だ。

特に注目すべきは、女性観客の増加だ。従来の『チェンソーマン』ファン層は男性が中心だったが、『レゼ篇』では女性観客の割合が大幅に増加したと報告されている。デンジとレゼの切ない恋愛模様、レゼというキャラクターの魅力、そして米津玄師の楽曲が女性層の心を掴んだ。映画館では若い女性グループの姿も多く見られ、従来のアニメ映画とは異なる客層の広がりを示している。

米津玄師「IRIS OUT」が記録的大ヒット

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の主題歌を担当したのは、米津玄師の「IRIS OUT」だ。この楽曲は映画の成功とともに、記録的なヒットとなった。Billboard JAPAN総合ソング・チャートで通算10週1位、歴代最高ポイント数を記録。ストリーミング・ソング・チャートでは12週連続1位を獲得し、日本楽曲史上最高再生数、史上最速での1億回再生突破を達成した。

ミュージックビデオも公開から73日でYouTube1億回再生を突破。さらに、2025年12月12日に公開された「レゼダンス」動画がSNSで大反響を呼び、Xでは150万いいね、1.4億再生を超え、YouTubeショートでは1464万再生、TikTokでは1.5Mいいねを獲得している。米津玄師は主題歌制作について、「原作のレゼが写ってるページを四六時中開きっぱなしにして睨みつけながら作りました」とコメントしており、作品への深い愛情が楽曲に反映されている。

「レゼダンス」動画の拡散は、SNS時代の新しいプロモーション戦略の成功例でもある。ダンスという視覚的に楽しめるコンテンツは、言語の壁を越えて世界中に拡散された。TikTokでは多くのユーザーが「レゼダンス」を真似た動画を投稿し、それがさらなる拡散を生む好循環が生まれた。映画と音楽、そしてSNSの三位一体が、かつてない規模のムーブメントを創出したのだ。

世界市場での成功とグローバル展開

『チェンソーマン レゼ篇』は、国内だけでなく世界市場でも大きな成功を収めている。100以上の国と地域で公開され、北米では初週に全米No.1を獲得。韓国では週末動員1位を記録し、3週間で220万人を超えた。米国では既に1725万ドルを記録し、国外の興行収入は12月7日時点で1億1824万ドル(約184億円)を突破している。

この世界的成功の背景には、MAPPAの戦略的なグローバル展開がある。日本公開からわずか1カ月後に北米公開を実現したスピード感は、海外ファンの熱を逃さず、口コミによる拡散効果を最大化した。アニメーションの高いクオリティと普遍的なテーマ性が、言語や文化の壁を越えて世界中の観客に受け入れられた証だ。

特に韓国での成功は目覚ましく、3週間で220万人という動員数は、日本のアニメ映画としては異例の記録だ。韓国の映画市場は自国産映画が強く、海外作品が大ヒットすることは容易ではない。しかし、『レゼ篇』は現地のファンの心を掴み、週末動員1位を獲得するなど、韓国市場でも圧倒的な支持を集めた。アジア全体でも高い興行成績を記録しており、アニメの国際的な訴求力の高さを証明している。

豪華声優陣が作品に命を吹き込む

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の声優陣も話題となっている。主人公デンジを戸谷菊之介、ヒロインのレゼを上田麗奈、マキマを楠木ともり、早川アキを坂田将吾、パワーをファイルーズあいが演じている。特に上田麗奈演じるレゼの繊細な感情表現は、観客から高い評価を得ている。

戸谷菊之介は「ジェットコースターみたいな作品」とコメントし、楠木ともりは「レゼとデンジがデートしてるシーンが好き」と語っている。声優陣のインタビューからも、作品への深い理解と愛情が伝わってくる。声優たちの熱演が、キャラクターに命を吹き込み、観客の感情移入を促している。

上田麗奈のレゼ役は特に絶賛されている。レゼというキャラクターは、表面的には明るく親しみやすい少女だが、その内面には深い孤独と葛藤を抱えている。上田麗奈は、この複雑な感情を繊細に演じ分け、観客の涙を誘った。デンジとのデートシーンでは幸せそうな笑顔を見せながらも、どこか儚さを感じさせる演技は、多くのファンの心に深く刻まれている。

続編『チェンソーマン 刺客篇』制作決定!

『レゼ篇』の大成功を受けて、2025年12月21日にアニメ『チェンソーマン 刺客篇』の制作が発表された。『刺客篇』は『レゼ篇』の続編となり、デンジの心臓を狙う刺客たちを描いたティザービジュアルとPVが解禁されている。制作はMAPPAが引き続き担当するが、テレビアニメとして制作されるのか、『レゼ篇』のように映画として制作されるのかは現時点では明らかになっていない。

『レゼ篇』が公開から91日間で興行収入96.5億円、観客動員631万人を突破し、国内歴代興行収入ランキング56位にランクインしたという実績から、『刺客篇』への期待も非常に高まっている。ファンからは、続編が映画として制作されることを望む声も多く聞かれる。

『刺客篇』は、原作でも人気の高いエピソードだ。デンジの心臓を狙う様々な刺客が登場し、激しいバトルが繰り広げられる。『レゼ篇』が恋愛要素を強く押し出した作品だったのに対し、『刺客篇』はよりアクション要素が強くなると予想される。ティザービジュアルには不穏な雰囲気が漂っており、ファンの期待を高めている。『レゼ篇』の成功を受けて、『刺客篇』も映画として制作されれば、さらなる興行成績が期待できるだろう。

アニメ×音楽の相乗効果が生み出した快挙

『チェンソーマン レゼ篇』と米津玄師「IRIS OUT」の成功は、日本のアニメと音楽の相乗効果を象徴する快挙だ。映画が話題になれば楽曲も注目され、楽曲がヒットすれば映画への関心も高まる。このポジティブなサイクルが、両者の記録的な成功を後押しした。

特に「レゼダンス」動画の拡散は、SNS時代ならではの現象だ。映画を観ていない層にも楽曲が届き、それをきっかけに映画館に足を運ぶ人が増えた。中国メディアは「震えるほど美しい!劇場版『チェンソーマン レゼ篇』はなぜ観客を圧倒したのか」と題した記事で、映像美と音楽の融合を高く評価している。

米津玄師の楽曲は、映画の世界観を完璧に表現している。「IRIS OUT」は、デンジとレゼの切ない恋愛、そして避けられない別れを歌った楽曲だ。映画を観た後に楽曲を聴くと、より深い感動が得られるという声が多数寄せられている。映画と音楽が一体となって、観客の心に強烈な印象を残すことに成功したのだ。

100億円突破へのカウントダウン

現在、国内興行収入98億円を突破した『チェンソーマン レゼ篇』は、100億円の大台突破が目前に迫っている。公開から3ヶ月以上が経過した現在も、動員ランキングで上位をキープし続けており、口コミによるロングラン上映が続いている。年内に100億円を突破する可能性は非常に高く、達成すれば2025年を代表するアニメ映画の一つとして歴史に名を刻むことになる。

『チェンソーマン レゼ篇』の成功は、アニメ業界に新たな可能性を示した。製作委員会方式に依らない単独出資モデル、迅速なグローバル展開、ストーリーの独自性、音楽との相乗効果——これらの要素が組み合わさり、記録的な大ヒットを生み出した。この成功体験は、今後のアニメ映画制作に大きな影響を与えるだろう。

100億円突破が実現すれば、MAPPAの単独出資モデルが完全に成功したことを意味する。制作費6億円以上に対して興収100億円という数字は、投資対効果として圧倒的だ。この成功モデルは、他のアニメ制作会社にも大きな影響を与え、業界全体の変革を促す可能性がある。クリエイターの理想を追求しながら、ビジネスとしても成功する——その理想的なモデルが、ここに確立されたと言えるだろう。

まとめ:新時代のアニメ映画ビジネスモデル

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、単なるアニメ映画の成功にとどまらず、業界の常識を覆す新しいビジネスモデルを確立した。MAPPAの単独出資という挑戦、米津玄師との強力なタッグ、女性層への訴求、グローバル展開のスピード感——これらすべてが融合し、98億円という驚異的な興行収入を生み出した。

続編『刺客篇』の制作発表により、『チェンソーマン』の勢いはまだまだ続く。2025年を象徴するエンターテインメント作品として、そして新時代のアニメビジネスモデルの成功事例として、『チェンソーマン レゼ篇』は長く語り継がれることになるだろう。100億円突破のその瞬間を、世界中のファンが固唾を呑んで見守っている。

投稿者 hana

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