震度6弱の悪石島で子供たち14人が校庭テント生活「もう限界」涙の島外避難

2025年7月3日午後4時13分、鹿児島県十島村の悪石島(あくせきじま)を震度6弱の地震が襲った。6月21日から続く群発地震は1000回を超え、小中学生14人を含む島民たちは極限状態に追い込まれている。「もう限界です」――震災から2日後の7月4日、涙を浮かべながら避難船に乗り込む子供たちの姿があった。

目次

震度6弱の瞬間、子供たちはどこにいたのか

7月3日午後4時13分、トカラ列島近海を震源とするマグニチュード5.5の地震が発生。悪石島では観測史上初となる震度6弱を記録した。

悪石島学園の当房芳朗校長(52)は、地震発生時の状況をこう振り返る。「午後2時30分頃から震度4の地震が続いていたため、すぐに避難できるよう一部の授業を校庭で実施していました。全授業終了後に震度6弱の本震が来ました」

島内唯一の学校である悪石島学園には、小学生9人、中学生5人の計14人が在籍している。幸い、生徒全員と家族の無事が確認されたが、その後の状況は過酷を極めた。

地震発生時の島内の状況

時刻 震度 状況
14:30頃 震度4 授業を校庭に移動
16:13 震度6弱 観測史上最大の揺れ
16:30 全島避難指示発令
17:30 避難指示解除

校庭のテントで耐え忍ぶ14人の生徒たち

震度6弱の地震後、生徒6人が再び校庭に集まった。学校側は緊急措置として校庭にテントを設営し、子供たちはそこで避難指示が解除される午後5時30分頃まで過ごすことになった。

「地震が続いているため、子供たちも落ち着かない様子でした」と当房校長は語る。テントの中で身を寄せ合う子供たち。余震の度に悲鳴が上がり、中には泣き出す子もいた。

過酷なテント生活の実態

  • 気温35度を超える炎天下:7月の悪石島は亜熱帯気候で、日中の気温は35度を超える
  • 余震への恐怖:10分おきに襲う余震に、子供たちは常に緊張状態
  • トイレの問題:校舎に入るのも恐怖で、簡易トイレで対応
  • 食事の確保:給食設備が使えず、非常食での対応
  • 睡眠不足:夜も続く地震で、まともに眠れない日々

「ドドドッ」地鳴りとともに襲った恐怖

島民の有川和則さん(仮名)は、震度6弱の瞬間をこう証言する。「ドドドッという地鳴りがして、『ついに来た』と思いました。横揺れと縦揺れが同時に来て、立っていられませんでした」

別の住民は「電柱が上下左右にぐらぐら揺れて、今にも倒れそうだった。こんな揺れは生まれて初めて」と恐怖を語った。

島民が体験した恐怖の瞬間

「店の商品が棚から全部落ちて、足の踏み場もない状態になった。ガラスが割れる音、物が落ちる音、子供たちの泣き声が入り混じって、まるで地獄のようだった」(商店経営者・60代男性)

1000回を超える群発地震の異常事態

気象庁によると、6月21日から7月3日午後5時までの間に、トカラ列島近海では震度1以上の地震が1000回以上観測された。この異常な群発地震は、悪石島の住民たちを肉体的にも精神的にも追い詰めていった。

群発地震の推移

期間 地震回数 最大震度
6月21日〜6月30日 約500回 震度5弱
7月1日〜7月2日 約300回 震度4
7月3日(震度6弱まで) 約200回 震度6弱
合計 1000回以上 震度6弱

専門家によると、これらは火山性地震でマグマの動きに関連している可能性が高く、「プレート境界型地震とは異なり、長期間続く可能性がある」という。

涙の島外避難、13人が鹿児島へ

7月4日朝、十島村の定期船「フェリーとしま2」が悪石島に到着した。震度6弱の地震から一夜明け、村は希望者の島外避難を決定。0歳から80歳までの13人が、涙を浮かべながら船に乗り込んだ。

避難者の中には、生後間もない赤ちゃんを抱いた母親、ランドセルを背負った小学生、部活動の道具を持った中学生の姿もあった。

避難者の内訳

  • 小中学生:6人
  • 乳幼児:2人
  • 成人:3人
  • 高齢者:2人

「まずはゆっくり眠りたい」と話す母親。子供を抱きしめながら、振り返ることなく船に乗り込んだ。岸壁では、島に残る住民たちが手を振り続けた。「また必ず会おうね」という声が、海風に乗って響いていた。

悪石島学園の現状と教育への影響

人口約70人の悪石島において、学校は単なる教育機関以上の意味を持つ。コミュニティの中心であり、島の未来を担う子供たちの居場所だ。しかし、相次ぐ地震により、正常な教育活動は困難を極めている。

教育活動への影響

項目 通常時 現在の状況
授業場所 教室 校庭・体育館
給食 調理室で調理 非常食・簡易食
部活動 毎日実施 中止
登下校 徒歩通学 保護者送迎

当房校長は「子供たちの安全を最優先に考えていますが、このままでは十分な教育を提供できません。オンライン授業の準備も進めています」と苦渋の表情を見せた。

専門家が警告する今後の地震活動

鹿児島大学の地震火山地域防災センターの専門家は、今回の群発地震について次のように分析する。

「トカラ列島の地下には、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う火山活動があります。今回の群発地震は、地下のマグマや熱水の動きが原因と考えられます」

今後予想される展開

  1. 長期化の可能性:過去の事例では数ヶ月から1年以上続くケースも
  2. 規模の変動:一時的に収束しても、再び活発化する可能性
  3. 火山活動との関連:諏訪之瀬島など近隣火山の活動にも注意が必要

気象庁は「今後1週間程度は震度6弱程度の地震に注意が必要」と呼びかけており、島民の不安は続いている。

島民たちの不安と覚悟

「この島で生まれ、この島で育った。簡単に離れることはできない」と話すのは、3世代で暮らす70代の男性だ。多くの島民が同じ思いを抱えている。

しかし、子供を持つ親たちの心境は複雑だ。「子供の安全を考えると、島を離れるべきかもしれない。でも、この島の暮らしも大切にしたい」と30代の母親は涙ぐむ。

島民の声

「毎晩、枕元に避難バッグを置いて寝ています。いつ大きな地震が来るか分からないから」(40代女性)

「子供たちが『島に帰りたくない』と言い始めた。それが一番つらい」(小学生の父親)

「でも、この島が好きだから。みんなで支え合って乗り越えたい」(中学生)

まとめ:悪石島の未来に向けて

震度6弱という観測史上最大の地震に見舞われた悪石島。1000回を超える群発地震の中で、子供たちは校庭のテントで恐怖に耐え、ついに島を離れる決断をした家族もいる。

しかし、島民たちの絆は強い。「フェリーとしま2」が島を離れる時、岸壁に集まった人々が大きく手を振る姿があった。それは別れの挨拶ではなく、「また必ず会おう」という約束のサインだった。

十島村は、避難者への支援体制を整えるとともに、島に残る住民への物資供給や医療体制の確保に全力を挙げている。子供たちの教育についても、オンライン授業の導入など、新たな取り組みが始まっている。

自然の脅威の前に、人間は無力かもしれない。しかし、悪石島の人々は、互いに支え合いながら、この困難を乗り越えようとしている。子供たちの笑顔が再び島に戻る日を信じて。

支援・問い合わせ先

  • 十島村役場:099-222-2101
  • 鹿児島県危機管理防災課:099-286-2256
  • 日本赤十字社鹿児島県支部:099-252-0600

※この記事は2025年7月5日時点の情報を基に作成しています。最新の情報は各機関の公式発表をご確認ください。

投稿者 hana

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